第八話 赤薔薇
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を競っているんだ?
途端、背筋に冷たいものが走った。
「てめぇ、村の人たちをどこにやったッ!!」
「教えるワケねぇだろぅクソガキィ」
吐き気のする笑顔を浮かべた。
「ブチ殺されてぇのか?」
「殺したきゃ殺せ!! 言う気はねぇけどなぁ」
ニタニタと化け物が笑う。
首を刎ねたい衝動を無理やりに抑え込んだ。
「急いだ方がいいぜぇ。もう手遅れかもしれねぇけどなぁウヒャッヒャヒャ」
コイツは本当に場所を吐くつもりはないらしい。
仕方なしに全速力で村を駆け回る。
「どこにいるッ!」
広い建物を手当たり次第に開けていく。
だが見つからない。
自ずと、俺は教会の前に立っていた。
めぼしい場所はもうここしかない。
扉をゆっくりと開ける。
漂ってきたのは鉄の臭い。
部屋は薄暗かった。
黄昏時の今、光は届いてなかった。
何の、音もない。
静寂だった。
目が慣れてくる。
だんだんと全体が見えてくる。
地面を染める、赤黒い色。
前に向ければ。
地獄だった。
死体、死体、死体。
人体とわかるものから。
ただの肉塊。
首だけ。
「そ、んな。なんで、どうして………?」
見覚えのある顔があった。
「シスター」
パン屋のおばちゃん。
果物屋の店主。
靴屋のおっさん。
知った顔が、落ちてる。
「あ」
見つけてしまった。
見慣れた髪色。
「あ、ああ」
無意識に手を伸ばす。
顔をこちらに向けた。
「セ、セル、か」
セルカ。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
また俺は。
救えなかったのか?
なぁ……?
なんでだよ。
なんでいつも。
俺ばっかりなんだよ?
なんで?
「なんでなんだよぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そうだ。
ユージオは?
アイツは今どこにいる?
その場から駆け出した。
ひたすら駆け回る。
最後の希望だった。
ユージオが生きていれば。
ユージオさえ生きていれば俺は。
浅ましくも、そんなことを考えていた。
もう、一人を失っているのに。
自分の心を保つために。
その希望に縋った。
村からギガスシダーへと向かう出入口。
そこに、ユージオはいた。
ユージオは親子を守るように倒れていた。
「ユージオッ!!」
「カ、ガト」
腹を、斬られていた。
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