暁 〜小説投稿サイト〜
キリトである必要なくね?〜UW編〜
第六話 約束
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
ことだ。
 でもだからといって何の罪もない少女を避け続け、心を傷つけていい理由にはならない。

 けれど本来これは、当事者たちが乗り越えるべき問題だ。俺のような外野が強引に解決していい問題じゃない。
 でもそうでもして繋ぎ止めていないと、行ってしまうような気がしてしまった。セルカがまた、あの北の洞窟に。

 ユージオは少し躊躇いがちに、でもセルカの目を見て口を開いた。

「僕は……セルカに、ひどいことをした。君が傷ついているのがわかっていても、見て見ぬ振りをしてしまったんだ」

「……」

「許してくれるくれるかは、わからない。けど、こんなことしか出来ないから。……本当に、ごめん」

 セルカに向かって、ユージオは頭を下げた。
 ほんの少しの間のあと。

「許すに決まってるでしょ。ユージオにとって、アリス姉様が大切な存在だったのは知ってたから。顔の似ているあたしを避けてしまうのは仕方ないと思っているわ」

「………ありがとう、セルカ」

「あたしは許したんだから、次はユージオが頑張ってね!」

 そう言ってセルカはにこやかに微笑んだ。

 本当に強い娘だ。
 辛くなかった筈がないのに、気丈に笑顔を浮かべている。
 きっと、セルカも前を向けるようになるだろう。

「これで三人になったわけだ。なら、名前を付けないとな」

「名前?」

 ユージオが怪訝な顔をする。

「そうだな。『アリス助け隊』なんかどうだ?」

「そ、それは……」

「ちょっと……」

 二人には気に入らなかったらしい。

「まぁ、名前なんてなくてもいいか」

 そう言いながら、俺は無意識に右拳を前に突き出していた。

「それはなんだい? カガト」

「え、あ、ああ、これは、俺たちは仲間だ、ていう約束みたいなものだ」

 あのゲームの中で、ギルドメンバーとクエスト前にやっていた合図が自然と出てきてしまった。

「せっかくだから、みんなでやろうか」

 そう言ってユージオは俺に拳を突き合わせる。
 セルカも合わせて拳を突き合わせてくれた。

 心から、感情が溢れてくる。

 二年前、同じように拳を合わせていた。
 デスゲームという恐怖の中で、俺たちは必死に生きていた。

 俺はもう、逃げない。
 二度と、大事な人を失わないために。



[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ