第六話 約束
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ことだ。
でもだからといって何の罪もない少女を避け続け、心を傷つけていい理由にはならない。
けれど本来これは、当事者たちが乗り越えるべき問題だ。俺のような外野が強引に解決していい問題じゃない。
でもそうでもして繋ぎ止めていないと、行ってしまうような気がしてしまった。セルカがまた、あの北の洞窟に。
ユージオは少し躊躇いがちに、でもセルカの目を見て口を開いた。
「僕は……セルカに、ひどいことをした。君が傷ついているのがわかっていても、見て見ぬ振りをしてしまったんだ」
「……」
「許してくれるくれるかは、わからない。けど、こんなことしか出来ないから。……本当に、ごめん」
セルカに向かって、ユージオは頭を下げた。
ほんの少しの間のあと。
「許すに決まってるでしょ。ユージオにとって、アリス姉様が大切な存在だったのは知ってたから。顔の似ているあたしを避けてしまうのは仕方ないと思っているわ」
「………ありがとう、セルカ」
「あたしは許したんだから、次はユージオが頑張ってね!」
そう言ってセルカはにこやかに微笑んだ。
本当に強い娘だ。
辛くなかった筈がないのに、気丈に笑顔を浮かべている。
きっと、セルカも前を向けるようになるだろう。
「これで三人になったわけだ。なら、名前を付けないとな」
「名前?」
ユージオが怪訝な顔をする。
「そうだな。『アリス助け隊』なんかどうだ?」
「そ、それは……」
「ちょっと……」
二人には気に入らなかったらしい。
「まぁ、名前なんてなくてもいいか」
そう言いながら、俺は無意識に右拳を前に突き出していた。
「それはなんだい? カガト」
「え、あ、ああ、これは、俺たちは仲間だ、ていう約束みたいなものだ」
あのゲームの中で、ギルドメンバーとクエスト前にやっていた合図が自然と出てきてしまった。
「せっかくだから、みんなでやろうか」
そう言ってユージオは俺に拳を突き合わせる。
セルカも合わせて拳を突き合わせてくれた。
心から、感情が溢れてくる。
二年前、同じように拳を合わせていた。
デスゲームという恐怖の中で、俺たちは必死に生きていた。
俺はもう、逃げない。
二度と、大事な人を失わないために。
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