第六話 約束
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、この巨木が木陰になってくれる。
「セルカは初めてだったよな? ここに来るの」
「そうね。村から離れてるから、来る機会がなかったわ」
「なら、結構驚いたんじゃないか? コイツのデカさにさ」
俺は《ギガスシダー》を指さす。
セルカも目を向けた。
「この樹は村からでもよく見えるけど、近くで見るとこんなに凄いのね。てっぺんまで見通せないなんて」
「俺も初めて来たときはビビったよ。こんなデカい樹、見たことなかったからな。ユージオは初めて近くで見たとき、どうだったんだ?」
俺の問いかけにユージオは少し目を伏せ、口を開いた。
「そう、だね。僕が刻み手に選ばれて、ガリッタじいに初めてここに連れてこられたとき、僕も圧倒された。こんなに巨大な樹が存在してるって、信じられなかった。でも、それと同時に憂鬱な気持ちにもなったんだ。僕は一生、この樹に斧を振るわなければいけないのか、てね」
図らずも、重い話になってしまった。
ユージオをこの地に縛り付けているのは、その天職のせいだ。それがなければ、ユージオはいますぐにでも央都に向かうはずだ。アリスを助けるために。
「そういや、なんか腹減ってきたな〜。持ってきた弁当を開けようぜ」
俺は空気を変えるべく、明るい口調で話す。
呆れ気味にセルカが口を開く。
「まだ十二時にもなってないわよ」
「いいからいいから。昼食を早めに食べてはいけない、なんて決まりはないんだし。なぁ、ユージオ」
「まぁ、そうだね」
セルカがため息をついた。
「仕方ないわね。あたしも少しお腹が減ってきたし、開けちゃいましょうか」
そう言って、セルカは俺が持ってきた藤籠を開ける。
中には、色とりどりのおいしそうなサンドイッチと、かなり形が崩れているまずそうなサンドイッチが入っている。
言わずもがな、おいしそうなヤツがセルカの作ったサンドイッチで、まずそうなのが俺が作ったサンドイッチだ。
多分、この不格好なサンドイッチは誰も食べないだろう。
俺が作ったヤツは、俺が全部食うか。
いただきます、と呟き自分が作ったサンドイッチを口にする。
「おお、結構うまい」
セルカが作ったものより形は不格好だが、味は意外に美味い。
まぁ、形が少し歪なだけで味が変わるほど繊細な料理ではないんだけどな。
「そうだね、確かに味は美味しい」
「もう少し形を整えれば、おいしそうに見えるのに勿体ないわね」
各々、俺手製のサンドイッチに感想を付けていく。
「ていうか、なんで食べてるんだ? 俺が作ったヤツは誰も食わないだろうから、残らないように全部俺が食おうと思ってたのに」
「なんでって……」
「そんなの
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