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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(下)
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事故が発生。これについては工部省から派遣された調査員も立ち合いにより確認しております。
この点からして安東家中要人の暗殺を視野に入れて準備していたことは関係者が【複数】認めております」
 すぅっと息を吸い瑠衣子は声を張り上げる。
「そしてっ!彼らが蜂起を行った理由は東洲復興予算の運用について不満があったからです。
ですが我々は幾度も重臣地行に対し、指定産業への出資を行っております。
我々と合資になりますので経営権に対する一定の制限はありますが、逆に言えば我々も重臣と共に経営に対し責任を負う事になります。
強制ではなく任意であり、なおかつ合資の範囲についても相談が可能です。即ち知行の運営に対する干渉とは――」


「もういい!わかったわかった!」
 吉光はカラカラと笑った。
「若奥方が弁が回るのはわかった、度胸もある。だが――中央はそうした道理だけでは動かんのだ。東洲の政庁で喚こうがどうしようが意味はない。
駒州公にしてみればいきなり重臣の横のつながりを貴様が一気に断った上にその後だんまりを決め込んだのは事実よ。
よいか若奥方、累卵の均衡で皇都は動いている。そこに貴様が東洲で振るった大鉈は幹まで揺らした、それが真実だ」

「‥‥‥はい」
瑠衣子は素直にうなずいた。

「目の前の利潤を着実に取るのは安東の家風、貴殿のそれも相通ずるものではあるが――」
 ふぅ、と伯爵はため息をつき、青年将家将校にも視線を飛ばす。
「末美殿、貴君も尉官なれど皇都と東洲を行き来するお役目よ。皇都の呼吸を姉上に伝えるよう努力せい。経験が足りぬのは致し方ないとはいえ――うむ。海良の殿に話を通しておくから貴殿から話せ」

「‥‥‥はっ」
 末美は肩を落とす。正論であった、末美からしても五将家の横のつながりどころか安東家家臣団内の派閥抗争を激化させたことで家臣団間の関係すら掴み切れていないのが実情である。

「若奥方、洲政を若殿と貴殿にお任せして監督を怠っていた私にも瑕疵があるのは事実。
だがそちらの独断専行も事実。若殿と共に情報の共有手段をもう一度見直ししたい」

「ありがとうございます、伯爵閣下。
それでは――こちらが推薦する方を皇都の方で然るべき地位にというのはいかがでしょう?
伯爵閣下や大殿から他家の方に推薦していただければ」

「――成程。よかろう、若殿と話しながら詰めるとしようか」
 この日、安東吉光と安東光貞、安東瑠衣子の間でようやく事後処理が終了した。安東家の改革はようやくこの日に一段落着いたといえるだろう。
新体制においては関洲知行持ちの中で特に保守的であった重臣を中心とした保守派首脳部が追放され、これまで特権の拡大を抑圧されてきた龍州よりの重臣達や大きな知行をもたない、下級家臣が名目上の知行を与えられ
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