暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
夏大会2回戦 影森高校
16話 そんなの中山さんに失礼だよね
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 影森は息吹からヒットを打てずにいた。投球フォームは中山と寸分狂わないのだが、例の如く息吹はパワー不足によって球速までコピーできないのだ。幸か不幸か、その誤差が影森のバッタを狂わせていた。先頭打者さえ許したものの彼女は後続を全て打ち取る。

 

 6回の裏。新越谷の攻撃は息吹から始まった。中山は息吹を睨むと、セットポジションから白球を投じる。

 対する息吹は中山の視線にビビりながらもボールを次々とカットしていく。パワー不足で前に飛ばしたくても飛ばせないのたが、そんなことは露とも知らず中山は頭に地が上っていく。

 

「ナイスカット!ピッチャーキテるぞ!」

 

 怜の息吹を鼓舞する言葉だったが、これにより中山の中で何かがキレた。

 

 中山はセットポジションを解くと、しっかりと力を溜めて白球を投じる。白球は大きく曲がり、スライダーの軌道を描いて息吹に迫った。息吹は避ける事が出来ず、ボールは彼女の足の付け根を捉える。

 

 息吹がその場でしゃがみ込んだ為、ネクストバッターズサークルにいた詠深とベンチからコールドスプレーを手にした芳乃が息吹に駆け寄った。

 

「先生、ここで代走入って良いですか?」

 

 梁幽館の偵察と代走の件は先生にも伝えている。

 

「そうですね。勝ち越しのランナーですし、行ってください」

 

 藤井教諭の返事を聞き、正美はファーストへ走っていった。藤井教諭も選手の交代を審判へ告げに行く。

 

「ファーストランナー川口さんに代わりまして三輪さん」

 

 ウグイス嬢のアナウンスが流れると、中山からはデッドボールで怪我をしたのではと動揺した。

 

「怪我で交代した訳じゃないから大丈夫って言ってあげて」

 

 代走に入った正美が影森のファーストに告げる。ファーストは頭を軽く下げるとマウンドへ走っていった。

 

ーー私も甘いなー。

 

 勘違いによる動揺に漬け込む手もあるのだが、正美にはその様な手段が取れなかった。

 

ーーこの分は私が取り返さないと。

 

 プレイが再開され、正美はリードをとる。

 

ーーモーションは中山さんのも伊吹ちゃんのも散々見た。失敗するイメージは全く浮かばない。

 

 中山が投球動作に入った瞬間、政美はスタートを切った。キャッチャーが二塁へ送球するが、セカンドがボールを手にする前に政美はセカンドベース上に立ち上がっていた。

 

 その後、詠深がしっかりとバントを決め、ワンナウト・ランナー3塁となる。

 

 バッターはトップに帰り希がバッターボックスに入った。彼女はレフト前の上手
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ