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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(中)
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た」
 神沢大尉が指揮を執る快速中隊が鎮台副司令官直属という扱いで支援にあたっている。彼もまた分家筋の人間で政局に携わりたがらない実務肌の彼は海良家の改革を安東が手綱を握る前提で支持をしている。

「ご苦労、済まぬが保安隊が陣頭に立つことになる」
 光貞の言葉に対し、神沢は珍しく返答ではなく疑問で返した。
「副司令官閣下、それは政治ですか?」
 表情というものをけしさったまま同年代の『陸軍少将』から視線をそらさない。
 
 光貞はゆっくりと息を吸い、吐いた。
「少なくとも戦働きではない。これは”戦”ではない。そうであってはならない。そうだろう惟長」

「戦ではない、ならば我らは今何をしているのです」
 神沢はゆっくりと繰り返した。何を考えているのか、その表情からは全く読み取れないままであった。
 光貞は口を挟もうとした瑠衣子を遮るように馬を動かし、そして神沢にゆっくりと、だが明瞭な発音で答えた。
「犯罪の検挙、だ」

 神沢は少しだけ嬉しそうに答えた。 
「承知いたしました、若殿様」
「なんだ」

「そうしたことははっきりとおっしゃってください。
政治にまみれて必要な事すら濁すようにはならんでください」
 神沢は笑みらしいものを浮かべ、兵たちのもとへも馬に乗り、駆けて行った。
 余談ではあるが神沢惟長大尉は二十数年後には中将にまで登り、近衛総軍の司令長官として皇室や五将家の意向が錯綜する近衛総軍の面倒を見ることになる。

 そして神沢の姿が見えなくなると入れ替わるように海良末美少尉が宮浜を連れてやってきた。
彼は光貞直属の伝令将校として瑠衣子から貸与されている‥‥貸与という言葉を義弟の全てを諦めた顏の事は記憶から抹消した。
「司令官閣下、保安隊と神沢中隊長の騎兵隊が……」
 
「わかっている神沢と話していたよ」

「いやぁ三百近く人手を動員するとは大捕り物ですねぇ。
これほど素晴らしい手際でしたら我々としても一安心ですねぇ」
 宮浜は張り付いた笑みのまま愛想を振りまいている。その正体はつかめないままだが、光貞からすれば工部省の利益代弁者であり、天領から補助金を引っ張ってくるには必要な人間であるのは事実だ。
 ある意味では他四将家と執政府に対する信頼の証明のようなものだと考えている。

「君の目的は東洲の鉱工業再建だったな」
 当然である。アスローンや〈帝国〉から鉱石を輸入するのはひどく面倒である。政治云々ではなく単純に技術的な問題もまだ残っているし、正貨の流出を抑えたいのは国家としても大店連としても――個別の商会としてはともかく総体としては――同じである。
 だからと言って安東家の利益になるとは限らない。そこに入る資本は護州やら天領やらの物を求めるのはわかっている。そこからはまた新た
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