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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(中)
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になってきた。
「だからこそ先に東洲の地盤を固めない限り本格的に皇都の舞台に立つ事すら――痛い、痛い、あれ、ちょっと気持ちいいかも、いややっぱり痛い!!待て、待て、とにかく今は執政府は支援を引き出す相手だ!!それに――奴がその手の仕事をやる人間なら今は好きにやらせておくべきだ、利害は一致している」

「‥‥分かりました、光貞さん。では今は御家の改革に注力しましょう」
「大倉山地、大倉山地だ。あの地を平定すれば安東は安定するよ。なんとしてもあそこは安東家の統治下におかねばならない。名だけではなく実も」
 山岳戦闘と爆薬の扱いに秀で、東洲で重用される武装組織を保有した勢力なのだ。
当然、そのような武装勢力は飼いならすか武装を放棄させねばならない。
 そして安東家は武装を放棄させることを選択していた。
「明日は鎮台司令部の方に出る」
 瑠衣子の動きが止まった。
「――保安隊だけでも十分ではありませんか?」
「そうはいかないよ。確かに嫌な仕事だよ、瑠衣子。
だけど私がやらなくてはならないのだ。五将家とはそういうものなのだよ」
 瑠衣子はほぅ、と溜息をついた。 光貞は決断力に欠けているが一度決めたことは必ずやり遂げる性質であった。だからこそ瑠衣子は夫であるこの男をただの傀儡と考えたことはなかった。



六月某日 午後第五刻 要江より南方十五里
安東家重臣 戸守領屋敷 ”東洲公爵”安東家公子 安東光貞


 4人乗りの簡素な箱馬車、外観だけでみれば特徴は3頭轢きであることくらいだ。
だが近づいてみるとその理由がわかる。御者は武装しており、馬車も中に乗る者を護るべく部分部分に薄い鉄板で装甲が施されている。
 中にいる者は貴顕の者であった――つまりは安東光貞のその妻である瑠衣子だ。
「――はじまるようですね」
 瑠衣子は宮羽織に宮袴といった上流階級の女性の外向きの服装であるがこのような物騒な馬車に乗っているのは相応の理由がある。
 扉を開くとそこに『相応の理由』が居た。

「瑠衣子、無理に出なくても良いだろうに」
 安東光貞は陸軍少将の軍服姿で騎乗の人となっている。
「仕上げを自分の目で確認したいのですよ」
 というのは半分嘘で半分本当である。本来であれば机上で何もかもを片づけるつもりであった。保安隊も安東家の指揮下であるが厳密にいうと州政庁の指揮下にあり、皇主の名の下に執政府によって定められた法と州政庁による州法に基づいた犯罪の検挙を行う。
 安東分家が務める東洲治安判事も実質は安東家の【助言】によって決定されているが皇主が刑部大臣の推挙を受けて執政の皇主に対する奏聞を経て任命されている。
 瑠衣子自身も無論だが光貞も戸守一派の処断に姿を見せるつもりは皆無であった。

「若殿様、奥方殿。準備が整いまし
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