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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(中)
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んできたのか判断がつかないのです。関州の関口屋を通じて声をかけたのですが、護州の方が紹介したのは間違いないのです鉱工寮の油州の事業に関わっていた者が紹介し、それは豊州の反乱事後処理に携わっていた者が紹介しただの、そこから更にいや、大蔵省の収税局にいた者が――だの、いやアイツは民部省の検地寮が雇っていた――だのもう滅茶苦茶です」 
 この時期、執政府は部省制をようやく有難味のための制度から管理運営の為の実務を担う制度へと転換を始めた最中であった。省庁の内部部局――時には省単位ですら――統廃合と新設が相次いでおり、組織図は年度ごとに変更される始末であった。
「内務が皇室魔導院とは別に邏卒を利用した組織を作っているとも聞いている」

 ましてやその中で実務の端々――そして時に後ろ暗い自治への介入などを――担った”嘱託”の人間を追う事はできなかった。七程前から動いている魔導院の”特務”の青二才共との関係すら臭わされている。
「私達の作った保安隊に至っては――あぁぁもう!!」
 拗ねたようにいいながらガシガシと光貞の腕に頭をぶつけてきた。
 保安隊は治安機構としてはともかく政治情報機関としてはひどく頼りないものであった。東洲内の治安安定には貢献しているが権謀術数渦巻く皇都のそれらと競い合うには経験も人手も教育能力も足りていない。

「‥‥‥関州を手に入れ、東洲にも首輪をつける、か。よほど我々も信用されてないのかな」
 光貞は苦笑した。いやそれも当然か、とも思っていた。安東光貞の生来の気弱さはどこか冷淡に安東家の能力を評価していたところもあった。父は勤勉で勇猛ではあったが安東家としての体面を保つためにその努力の過半を集中せざるを得なかった。
「‥‥‥皇都と戦いますか」
 甘えた素振りのままだが声は冷たく、鋭い。
「まさか、いまのところ互いに目的は一致している。何より中央だ」
 重臣を地方勢力から安東家の官僚へ作り変える。以前と同じような主家と対等であるような事を認めるつもりは当然ながら安東家としても執政府としても認めるつもりは毛頭ない。
 皇家の下に五将家があり、五将家の下に陪臣が居るのだ。大半の改革派一種の単純化と効率化を目的とする。安東家におけるそれもそうした多数派の改革に属するものであった。
「私達は東洲の者にとっては”中央から来たもの”で、皇都の連中にとっては東洲に新しく居座った莫迦な政敵なのさ
その均衡の上に居るのが今の安東家だ。瑠衣子が思っているより我々は危うい」

 光貞は気弱で決断力に欠けているが、けして見かけの印象のように愚鈍ではない。瑠衣子に引っ張りまわされるようになってからは事後処理や根回しの才覚は父から確かに譲られているのだと周囲からみなされるようになっている。
 瑠衣子のそれが甘えるというより頭突きのそれ
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