2章
プロローグ
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最初の記憶は、母親の温もりだった。お母さん一人に抱きかかえられ、一緒に過ごしてきたこと。
お父さんの姿は見たことなかった。二人だけの世界で、お父さんって考えそのものも、五歳くらいまで強く持っていなかった。
海に遊びに行った。太陽が眩しかった。お母さんは、ずっと笑ってくれていた。幸せだった。
お母さんは、ぎゅって抱きしめてくれた。暖かかった。
ずっと二人で生きてきた。ずっとずっと。好きなテレビが何回もやってた。それぐらい。あまり見れたことはないけど。
お肉が大好きだった。お母さんが作ってくれたハンバーグが、なによりも大好きだった。
時々、お父さんが誰かを聞いてみた。お父さんは、狂ってしまったらしい。
狂ったという言葉は、聞いたことがなかった。でも、その意味をお母さんは教えてくれなかった。
お父さんがやってきた。お母さんを怒ってる。お父さんって、こんな人なんだ。
お父さん、目に色がなかった。見えないのかな。
お父さんに頭を掴まれた。ニッコリと笑ってた。でも、お母さんのニッコリとは、なんか違ってた。
「○○○○!」
お父さんが何かを言った。でも、その意味は全然分からなかった。
お父さんが、黒いものを付けた。そしたら、お父さんが赤くなっちゃった。でも、目に色がないままだった。
お父さんの手が、お母さんを切っちゃった。「なぜだ」って、何度も言ってる。でも、動かなくなったお母さんは、もう動かなかった。永遠抱きしめてくれなくなった。
そうしたら、お母さんの体が溶けちゃった。黒くて、ドロドロになっちゃった。もう、抱きしめてもらえないんだなあって。
怒ったお父さんは、泣いてた。「全部お前の……お前と俺のせいだ」だって。生まれてはいけなかったんだって。
いやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
生きたい
いきたい
イキタイ
生きてちゃいけなくても
生きてることで、他の何かを食らうとしても。
生きてることが、罪だとしても。
生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい
お空に降ってきたお星様。お願いです。生きたいです。
でも。お父さんみたいな、お父さんだった赤い人は、ダメだって。
お父さんの、お父さんじゃない声が、聞こえた。
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