第89話『優菜の想い』
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。元々その可能性も考えていたために、リアクションなどとれる訳もなく。
「では晴登君は、そんな曰く付きの花火を結月ちゃんと一緒に見ることに何も感じないんですか?」
「え? ・・・あっ!」
ところが優菜の言葉を理解すると同時に、みるみる内に晴登の顔が真っ赤に染まる。噂の内容を知った今、これまでの皆の言動が繋がった。つまり、班員の男子が告白しろと言ったのもこういう理由で・・・
「てことは結月が誘ったのって…!」
「ようやくわかりましたか。随分と鈍感なんですね、晴登君は」
そうか。結月は初めから"そのつもり"だったのだ。噂の内容を隠した理由は・・・よくわからないけど、驚かせたかったから…とかかな…?
「どうしよ…」
「何を今更迷ってるんですか? 晴登君は結月ちゃんのことをどう想ってるんです?」
「え、それ…は…」
幾度となく聞いた質問だ。だが、答えは未だに定まらない。一体どうすれば正解なのか。そもそも正解なんてあるのか。…わからない。
「……」
悩む晴登の横顔を眺めながら、優菜の表情も険しくなる。彼女が何を考えているのかなんて、彼は知る由もないのだが。
そんな無言の時間がしばらく続いた後だった。
「ハルトー!!」
「「!?」」
突然、どこかから結月の声が聴こえてきた。しかもそれだけではない。続けて聞き覚えのある先生の声も聴こえてくる。
「結月ー!!」
「こっちでーす!!」
晴登と優菜は即座に呼びかけに応える。救助が来たのだ。こんなに早く出会えるなんて、実に幸運である。
互いに呼びかけ合い、徐々に距離を詰めていく。そしてついに・・・
「結月!」
「あ、ハルト!」
木の陰から出てきた結月と目が合うと、彼女は表情を明るく輝かせて駆け寄ってくる。そしてその勢いのまま、晴登の胸に飛び込んだ。
「良かったぁ〜生きてたよぉ〜!!」
涙をぼろぼろと零しながら、結月は晴登を強く抱き締める。本来であれば、生きていることすら奇跡な事故だったのだ。彼女の心配ももっともだろう。晴登は結月を安心させるために、優しく頭を撫でてあげる。
「心配かけてごめん」
「ううん、無事で良かった。ユウナも無事で良かったよ」
「はい、晴登君のおかげで。それに救助を呼んで下さって助かりました、結月ちゃん」
「ボクはできる限りのことをしただけだよ」
結月は涙を拭いながら、にっこりと笑いかける。晴登と優菜はそれに笑みで返した。
それにしても、もう救助が来たということは、先程の大雨が降っていた中で結月は助けを呼びに行ってくれたということになるだろうか。本当にそう
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