陰影ミステリアス
[5/34]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。クローンからクローンを作ると弱くなるって奴」
「ただ、それだけを見てクローンがオリジナルより劣化していると判断するのは早計だ。むしろ潜在能力はクローンの方が引き出しやすくなっている」
「どういうこと?」
「人間の脳は能力を100パーセント発揮できない。自らの肉体が崩壊しないように、セーフティが働いているからだ。しかしクローンは遺伝子の劣化によってそのセーフティに異変が生じているから、やり方次第ではオリジナルより上回ることが可能だ。有り体に言えば、基礎能力や初期値はオリジナルが上でも、成長率や限界値はクローンが上ということ」
「じゃあクローンを繰り返した方がトンデモ人間になれるってこと?」
「ンな訳あるか。そんな事をすれば肉体に致命的な異常が生じて、短命かつ脆弱な命になる。『セーフティ以上の負荷をかける=短時間で体を壊しやすい』のだから、環境やサポートが充実し、その上本人が地獄に匹敵するレベルの努力を長期間しなければオリジナル越えなんて成し得ない。おまけに余程の理由が無ければ、常人はそこまで努力を続けられない。途中で妥協する」
「う〜ん……その条件を培うのは実験施設なんかじゃ到底無理だね。でも施設で生き残るなり脱走なりで保護されたなら……」
「その後の環境次第だが、少なくともモチベーションを維持できない環境で強くなれるはずがない。まぁ逆に言えば条件を全て満たせれば、最強のクローンが生まれるかもしれないってことなんだが……ん、今はどうでもいい話だな」
とはいえ、報復心はモチベーションを維持させる側面もある。己の境遇を知った生き残りのクローンが報復心を糧に鍛えていることは十分あり得た。
会話もそこそこに、ケイオス達は下に降りるほど魔導結晶に浸食されつつある施設の探索を再開する。ここは先程見えたベルカの大地とも繋がっているため、施設内をうろつくグールに紛れてウェルスが混じっていた。とりあえず目に付く敵は全て片付けているが、ケイオス一人に任せっきりなのがディエチにはどうにも不服だった。
「あのさぁ、やっぱり私達も少しは戦った方が良くないかな?」
「いらない。あんた達は情報収集に努めてくれれば十分」
「でも……」
「逆に訊くけど、なんでそこまで戦おうとする? 今のあんた達にそういうの求めてないって言ってるのに、まだ納得できない?」
「一応……」
「そっか」
「…………」
「…………」
「……あれ? ここは説得する流れのはずだよね? なんで無言?」
「どう言えば納得してもらえるかわからなかったから」
「あぁ〜、だから会話途切れたんだ。でもさ、もう少しだけ頑張って言葉を使おうよ……」
「そういうのは苦手だ」
「それでもだよ。説明が下手でも、う
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ