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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(上)
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れ。私にできない事を君がやってくれると信じている」

「‥‥はい」
 瑠衣子の耳が赤く染まっている事に気づいた宮浜は黙って肩をすくめた。 




 それから十日ほどして大量の現金を積んだ【復興総局復興事業部】の徴募員とそれを警護する総局保安隊が東洲を巡り歩いた。

宿を起つと、軍楽隊を引き連れた徴募員が安東家の旗持ちを先頭に、"はい、せぇの"と音頭を取ると東洲地元の戯れ歌をちんどんと鳴らし始めるのである。

「公爵様のお触れなるぞ!普請の徴募であるぞー、飯も出るぞー、我ぞという者はおらぬかー」
――すると、やいのやいのと何処からか、流民や焼け出された自作農連中が"なんぞなんぞ"と姿を見せる。
 徴募員は巨大な郵便馬車から袋を取り出した。
「我らについてくるのであれば日給を出すぞー、飯も出すぞ〜、囃子をやる奴はおらぬか〜」
 面白がって調子はずれに太鼓をたたいたり、こりゃぁ本物の殿様の家臣なのか、とこっそり後ろをついて歩く者などで行列が膨らむ。
 一通り膨らめばこいつはどこそこのものだ、とかこいつはどこそこの村の奴じゃ、とやいのやいのと雑炊を食いながらあいさつを交わす。
「殿さまの慰撫じゃ、食え食え」
 これを五日程続けると徴募員の練り歩きに募集を受けた流民達に日分の日給を配った。それは皇都と比べれば安い物ではあったが今の彼らにとってはそれで十分であった。
 そしてある者は州都東ノ府へ或る者は最大の要港である要江へ、あるものは東海艦隊の根拠地の一つ、かつて海良家の本拠地であった大水ノ城へ、そしてあるものは鉱工業の拠点であった新宮へ――多くの者が移動を開始した。
 安東家直轄領の経済は軋みをあげて強引に回され始めた。



そのようなちょっとした”まつりごと”から数日を経た東洲政庁。
安東の若夫婦が最も長く同じ時を過ごすのは屋敷ではなくこの官衙であることは周知の事実となっていた。

「ふむ――素晴らしい!流石は”宮浜”殿、お見事な手際ですね。何はともあれ人が動けば動きやすくなります」
 州政庁副長官の隣の部屋に参与と書いた札を下げて彼女は居座っている。
 瑠衣子はにこやかに皇都から来た男に笑いかけた。
「いえいえいえいえ、これも仕事ですので」
「フフフフフッどうせ後で情報を抜く準備をしているのでしょうが――まぁ許します当面は」 
「いやだなぁ、そんなことはあまり考えてませんよ」
 ニコニコと笑みを交わしている二人を文官達は目を合わせないようにしている。
海良家の処世術であった。

 そしてその白々しい歓談を破ったのは彼女の夫であった。
「瑠衣子!いくらなんでもやりすぎだ!戸守達が評定を所用で出られないと言ってきたぞ!これでは――」
 わずかに顔を青褪めて光貞が誰を気
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