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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(上)
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は光貞に単刀直入を旨とする瑠衣子は珍しく言葉を濁した。
 光貞が

 眼鏡をかけ人の好い質屋の手代のような顔をしている。
「やっやっ始めまして閣下。工部省鉱工寮の嘱託調査員をやっております宮浜と申します」
 宮浜の自己紹介を聞いて光貞は顔を引き締めた。
「工部省の嘱託か」
工部省は守原家と宮野木家の牙城だが実務を担う者に衆民が増えているという――天領を統治する官僚の中には公然と衆民に外注を行う者すらいる。
 内務省の故州伯子、弓月由房卿も加わっている|急進改革派官僚団(ラディカルギャング)は公式に官吏として登用しようとしていると聞いている。
「こちらへの投資誘導を兵部省と合同で行おうと思いまして、それに適した土地かどうかの調査に参りました」
 穏やかそうな笑みを浮かべるが目は笑っていない。
「調査、調査か」
 官吏達は今どこもそこも情報網を作ろうと躍起になっている。天領は商人達から農民まで好き勝手にやった――規制を行うだけの統治能力が中央になかった事が原因である――ため、ようやく中央が皇都を掌握し、自由化に対する徴税能力、把握能力を高目用としたときには天領はあまりに各地で異なり、複雑怪奇な状態になっていた。
 土地に関する所有権に関する法整備に失敗し、”合法的脱税”を数年間認める羽目になり――更には龍州乱に際しそれが火器の移動に利用されたことで五将家も本腰を入れて調査を始める事となった。
 ”地域ごとに色合いの全く異なるばらばらの諸将家の前例に則った自治に任せ、ようやく慌てて整理しようとするからこんな無様をさらすことになる”と事前の調査を求めていた――そして中央が大量の人員を使う前例を恐れた五将家に却下された――改革派達の間では囁かれていた。
「はい、閣下。鉱工寮は天領を始めとした各地域への鉱工業開発支援制度の運用が主ですが――」
 ちらり、と見た先にあるのは破壊された工場を利用した仮設住宅だ。
「東洲の再建は我々にとっても重要な課題です、えぇとりわけ龍州の治安維持の為にも」

「‥‥ところで鉱工寮の嘱託に移る前は君はどこにいた」
「ハハハハハハッ、いやぁ色々とたらい回しでして、現体制になるまでは改革続きでどこがどこなのやら、未だに自分が最初に就いた仕事場がどこなのかわからないですよ」

 光貞は不愉快そうに顔を歪めて口を開こうとするが、瑠衣子はそっと彼の手に触れた。
「‥‥‥若殿様、どうかお許しを」「瑠衣子さん、信頼してよいのだね?」
「”安東と海良の為”に。そこに偽りはありません」
 そこの裏にある意味を光貞は漠然と理解していた。
「――わかった。君を信じよう。好きにやってくれ、だがやる前に何をするのかだけは教えてくれよ」

「はい」
「私が責任を取るのだから。君が必要だと感じたら好きにやってく
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