幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(上)
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人としてそうなれるよう努力します」
この日、安東家と海良家の縁談は無事にまとまった。東洲復興に向けて安東家はまず一歩を踏み出したのである。
皇紀五百四十五年 四月某日 東洲州政庁 貴賓室
”東洲公爵”安東家公子正室 安東瑠衣子
「農業復興を優先‥‥農業用水路再開発‥‥え?ここも?」
瑠衣子が可愛がっている弟――本人からすると異論があるだろうが――である海良末美はとがった顎を撫でて首を傾げた。
陸軍将校ではあるが海良水軍として必要な知識は商人としての知識を含めて一通り叩き込まれている――陸軍の道を選んだのは父親が東海艦隊で受けた扱いから将家と結びつく道を採ったからである。
「民草を飢えさせるのは恥だそうよ、それに家臣の土地に必ずしも大戸山地に面しているわけでも鉱床があるわけでもないから仕方がない、ですって」
〈帝国〉風の装飾が施された眼鏡を外し、瑠衣子はこめかみをもんだ。
「‥‥なるほど、しかし来年どれほど穀物を取れるのか、収入の見通しはどうなのです?
鉱工業の再建より先にこちらを優先する理由は?
数字でどうにか説得できませんか?」
「”瑠衣子さんの意見はまったく道理だけど家臣の理解を得られない。優先順位の変更は以前、私が説得して回ったのだけどダメだった”ですって」
帰ってきた返答は危機感がないのかやる気がないのか!
末美はおやまぁと苦笑を浮かべた。
「それはそれは、流石は長評定が名物の御家だけある」
扇子を弄びながら瑠衣子は苛立たし気に早口でまくし立てる
「まったく黙って聞いてやれば、誰もまともな案の一つも出せないの?
この期に及んで関州の関所守気取りで金の出ない権益に胡坐をかいてるんじゃないわよ!
そんな舐めた真似ができる状況じゃないことぐらいわかりなさいよ!!」
嵐の如き姉の怒りから逃避して末美はそっと窓の外を見る。東洲の自然は戦火を経てなお雄大であった。
眼前の恐怖の対象を意識から消すのもこれも将校の求められる危機管理能力の一環なのだ。多分、きっと。
「ここの連中はどいつもこいつも役立たず!
状況の変化に飛び込んだ癖に伝統にしがみつく不合理!
軍事も政治も集権と中央の確固たる存在こそが力であると証明されているのに
”軍人”と”武人”の区別もつかぬ間抜けが跋扈し
それに要らぬ遠慮をして外に頼る役方と振り回される次期当主!
そして当主は確たる方針も出せずに無責任に皇都の政争にかまける始末!
分かった。光貞さんの言う通りこの公爵家とやらは私達が面倒をみないと駄目よ」
意識に飛び込んできた内政干渉を示す言葉に末美は慌てふめく、父も便宜を通して利権を握ることを計画してもそこまでは言っていない。
「め、面倒を見るって‥‥姉上、どうする
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