人と希望 後編
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かっていても抗えないのが人間の性。ましてや彼は天海にとっての最後の希望。そんな彼が負けるようなことがあれば・・・
「滅竜奥義改!!水中天嵐舞!!」
「滅神奥義!!絶対零度!!」
彼は、戦う意味を見出だせなくなることだろう。
「そんな・・・ことか・・・」
正面からぶつかり合った二人の拳。それに打ち勝ったのは小さな少年のそれだった。
あらぬ方向へと曲がり消し飛ばされるティオスの左腕。それでも、両腕を失っても彼はなおも戦いを続ける。
「そうだ・・・勝て・・・勝ってくれ・・・」
自らも交戦しているのに、そちらに意識がほとんど向いていない。それだけ彼の存在は重要であり、彼にとって必要な人物だった。
それなのに、ティオスは戦いに破れてしまった。
「うおおおお!!」
ティオスが破れた直後、彼の中にはもう夢も希望も残されてはいなかった。胸の中に残されているのは、絶望でしかない。
(この戦いも、意味がなくなってしまった)
仲間の勝利を肌で感じ取ったのだろう、桜髪の青年の勢いは次第に増していく。無理もない、もし立場が逆だったら、自分もそうなっていたのだろうから。
「くだらんな・・・」
自分がもっとも求めた最強への道。それが閉ざされてしまった今、もう成すことはない。
「フンッ」
「がはっ!?」
意気消沈していたはずの天海。そんな彼の手から放たれた拳は今までのものよりも遥かに早かった。
「ナツと言ったな、最後にお前のような強者と戦えて、楽しかった」
仲間たちの魔力も宿しパワーアップしたはずのナツ。その彼が反応を許されることもなく次から次へと攻撃を受けていく。
正拳突き、上段蹴り、肘打ち、左フック・・・シェリアの治癒魔法により傷を癒したはずなのに、その時よりも傷だらけにされた青年は、意識を失いつつあった。
「がっ・・・」
そして最後のアッパーパンチ、それを受け宙を舞い、地面へと叩き付けられたドラゴンの子は、意識を完全に失った。
「ティオス・・・」
戦いを終えた天海。彼の瞳に映る友は、静かに眠っていた。
ウェンディside
ティオスを倒したシリル。そのことに大喜びしていた私たちでしたが、すぐにその感情は消し飛ばされました。
「そんな・・・」
「ウソ・・・だろ?」
エルザさんとグレイさんの声・・・私たちの視線の先にいるのは白目を向いて倒れているナツさんと、こちらを見ている天海の姿。
「こんなことって・・・」
「あぁ・・・」
ティオスを倒したことにより、勝利を噛み締めていた私たちにとって、目の前に広がっている光景は絶望に他なりません。
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