暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第44話:病室ではお静かに
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、顔には汗を浮かべている。誰が見ても無理をしている。
 しかし、その手には尋常ではない力が込められていた。今の今まで疲労と熱で寝込んでいた少年の力とは思えない。

 クリスには指一本触れさせないという強い意志を感じさせる。

 そんな透の手と瞳に込められた強い意志を前に、ウィズは肩から力を抜き手を引っ込めようとした。しかし透はまだ手を離さない。

「安心しろ。お前達2人を傷付けるつもりは毛頭無い。本当だ。信じるのは難しいのだろうが、な」
「…………」
「…………分かった。ではこれだけは返そう」

 出来る限り柔らかな声で透を宥めるウィズだったが、尚も手を離そうとしない透に遂にウィズが折れた。取り上げたウィザードリングの幾つかを透に返し、抵抗の手段を与えると透も漸く警戒を解除したのか手を離し、同時に意識も手放したのかそのまま再び布団に倒れ込み気を失ってしまった。

「透ッ!? 大丈夫か、透ッ!?」
「落ち着いてください」

 再び気を失った透を心配し声を掛けるクリスだったが、音も無く表れたアルドがクリスを宥めると透に布団を掛け直し、濡らしたタオルで汗を拭った。

 暫く透を介抱していたアルドだったが、彼の様子が落ち着いてきたのを見ると一つ息を吐き、立ち上がると腕組してウィズとクリスを交互に見やった。フードを目深に被っている為表情を伺うことは出来ないが、その雰囲気から御機嫌斜めであろうことは容易に伺えた。

 ウィズですらそんな彼女を前にしてバツが悪そうに咳払いをしたのを見て、自分も下手な事をするのは良そうと畏まるクリス。
 大人しくなった2人を見て、アルドは大きく溜め息を吐いた。

「…………今後、私が2人の体調を問題ないと判断するまで一切の諍いは禁止します。宜しいですね?」

 伺い立てているように聞こえるが、言外に「病人が無茶するような騒ぎを起こすんじゃない」と厳命しているのが理解できた。クリスとしては透が少しでも早く治ってくれるように協力する事は吝かではなかったので、ここは大人しくアルドに従う事にした。

 とその時、外から突然喧しいサイレンの音が聞こえてきた。

「何だ、この音?」
「ノイズが出たようですね。これはその警報です」
「安心しろ。この部屋の周りには目に見えない結界を張ってある。ノイズはここには近付いてこないさ」

 初めて聞くサイレンがノイズの出現を表すものだと聞いて、クリスは血相を変えた。このタイミングでのノイズの出現、これは行方を眩ませた自分達を探し出す為にフィーネが送り込んだに違いない。

「おい、あたしのイチイバルを返せ!?」
「いけません。まだ戦わせられるほど、あなたの体は万全ではないのですよ」
「でも、このノイズはあたしと透を探す為にフィーネが寄越したんだ
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