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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
つかの間の休息
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いの、天使の絵がかけられていた。
優しくて暖かみのある絵に目を奪われてはしゃいでいるミミを見て、子ども達は警戒するのも莫迦らしくなったのか、無意識に浅くなっていた息を深く吐いて、肩の力を抜く。

「とりあえず、何か異変はないか調べましょ」
「そうだね。ここで寝泊まりするかどうかは、それからでも遅くはないだろうし」
「ここなら野生のデジモンに襲われることもないわよね」

すっかり安心しきってしまった子ども達は、扉を閉めて館内を散策することにした。


だが、おかしいのだ。
どう考えてもおかしいのだ。
誰も気づかなかった、丈でさえも、そして治でさえも。
人間がいないはずのこの世界で、どうしてこんなに立派なお屋敷が立っているのか、もっとよく考えるべきだったのだ。
ゲンナイが、ここにはデジモンしかいない、人間はいない異世界だって言っていたのに、人間が住むために建てられたような館が、あるはずがないのに。
それだけではない、建物は人間が使っている気配がないと、朽ちるのが早いのである。
人間がいないはずのこの世界で、まるで今さっき建てられたような新品の館、塵一つ落ちていない、汚れていない館内。

人がいないはずの館内が不自然なぐらいに綺麗であることに、違和感を覚えなければならなかったのに、誰1人として気が付かなかった。



9人いる子ども達は、3人1グループで分かれて散策する。
太一と治と空はもっと奥を調べてくると言って、疲れているパートナー達を引っ張っていった。
丈とミミと光子郎は、1階の部屋を中心に見て回る。
そして大輔達最年少は、2階へと上がっていった。

「………………」
『コウシロウはん?どないしはりました?』
「え?あ、いや……」

天使の絵の隣にあった部屋の扉を開け、丈とゴマモンがまず部屋に入る。
壁についているスイッチを押して、電気をつける。
丈とゴマモンが入り、危険がないかを確認してから光子郎達に入るように促す。
ミミとパルモンはそれに従ったが、光子郎はいつの間にか開いていたパソコンと睨めっこをしていて、丈が呼んだことに気づかなかった。
光子郎は何かに熱中すると周りの音を遮断してしまう癖がある。
なのでテントモンは、丈が呼んでいるのに何の反応も見せない光子郎が気になって、ポンと肩を叩きながら声をかけた。
接触があったことで流石に気づいたらしい光子郎は、我に返ってテントモンを見下ろす。
何だい、って聞くと、ジョウはんが呼んでますよ、と返した上で尋ねた。

『何や、考え事ですかいな』
「あー、うん……ちょっと、気になっちゃって……」
『何がですのん?』
「うん……ムゲンマウンテンの頂上で、ゲンナイさんからもらった地図と上から見たファイル島を照らし合わせて、大まかな地図を作
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