ちいさなしまのおはなし
つかの間の休息
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っただろう?」
でも、と光子郎はパソコンを操作する。
ディスプレイに映し出されている、3Dのファイル島の地図が、ぐるぐると回ったり、拡大されたりした。
「でも、上から見た時、こんな建物見なかった。見てたら、僕が書き零してるわけないもの」
『うーん……?森で隠れて見つからんかったんとちゃいます?』
「……それもあるかもしれないけれど」
しかし腑に落ちない、と光子郎の表情は険しい。
確かに崖から目元だけを覗かせて見下ろしただけだから、きちんと見たと言い張るのことはできなかったが、一面森で、屋敷の建っている箇所だけがぽっかりと開いていたら気づくはずだ。
深い森の中で、ぽつんと建って子ども達を待っていたかのように、突如として現れた洋式の館。
この違和感は何だろう。まるで自分達が来るのを待ち構えていたかのような……。
そこまで考えて、光子郎は頭(かぶり)を振った。
まさか、幾らここが異世界だからと言って、そんなことありえないだろう。
考えすぎて疑心暗鬼になっているだけだ。
「光子郎?大丈夫か?」
「……はい、すみません。大丈夫です」
特に何も異変のようなものはなかったと判断した丈が、部屋に入らずに外で待っていたらしい光子郎に声をかけてきた。
パソコンを閉じて、何でもなかったかのように取り繕い、次の部屋に行こうと促す。
悪戯に不用意なことを言って、丈を心配させたりミミを怖がらせるのは本意ではない。
幾ら光子郎でも、そのぐらいは弁えていたので、何でもないと言って誤魔化した。
2階の大輔達を纏う空気は重い。
ずーっと表情は強張っているし、足取りだって軽いとは言えなかった。
いつもの大輔からは考えられないような、慎重な足取りで階段を上がっていく。
相変わらず手はブイモンと繋がれたままで、まるで自分が何処かに引っ張られたり、ブイモンが何処かへ連れていかれないようにしているようにも思えた。
賢とヒカリも、それぞれパートナーを抱っこして、大輔に引っ付く形で階段を昇って行く。
まずは、正面の部屋。つま先で立つように背伸びをして、ドアの取っ手を掴み、降ろした。
開ける。ぎぃ、と蝶番が軋む音が、静寂の空間に嫌に響いた。
真っ暗な部屋だった。何処かにスイッチはないかと壁を手探りで探す。
でっぱりを見つけて、大輔は迷うことなく押した。
カチ、という音と同時に、部屋にぱっと明かりがつく。
何の変哲もない、ホテルの一室のような部屋だった。
ベッドがあって、何かを仕舞える棚があって、机があって。
まだアメリカにいた頃、家族みんなで旅行した先のホテルに似ていた。
家族。
余計な事を思い出した大輔の表情は、複雑なものとなっている。
大輔の後ろから部屋の中を伺っていた賢とパタモ
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