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俺様勇者と武闘家日記
第1部
アッサラーム〜イシス
不思議な歌
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もキメラの翼をもらって、戸惑いの表情を隠せない様子だ。
「え、あの、本当に頂いていいんですか?」
「俺はそんなものがなくても呪文を使えるから必要ない。もらえるものはもらっとけ」
「あ……ありがとうございます」
 素っ気ない言い方だけど、ユウリもルカのこと気にしてくれてたみたいで、なんだか私まで嬉しくなってしまう。
「なにか言いたそうだな」
「うん。弟のためにわざわざありがとう」
「……ふん」
 ぐいっ。
「痛い痛い!」
 姉としてお礼を言っただけなのに、なぜか私の髪の毛を引っ張るユウリ。誰か通訳お願いします。
「そうだ、ルカ。これからアッサラームまで戻るんでしょ? どうやって帰るの?」
「師匠からアッサラームに帰る用のキメラの翼をもらってきてるんで、大丈夫」
 なるほど、前もって用意してきたんだ。一人で砂漠を越えなきゃならないのかと心配だったが、取り越し苦労だったようだ。
「では、短い間でしたが、お世話になりました。ピラミッドに行く際は、どうか気を付けて下さい」
 私たちを見回し、再び深く礼をするルカ。
「ああ。お前の師匠にもよろしくな」
「はい!」
「ルカ。商人の修行、頑張ってね。ドリスさんに迷惑かけちゃダメだよ?」
「お袋みたいなこと言うなよ! アネキ!」
「ミオ、お前実はブラコンなんじゃないのか?」
「もう、なんでそう言うこというかな!?」
「るーくん、また会おうね! 今度は一緒にお酒のもう♪」
「いや、まだ早すぎるから!!」
 ルカはキメラの翼を使うまで、ずっと笑顔だった。私たちもまた、笑顔でルカを見送ることができた。この先長く険しい旅が続くと思うけれど、ちょっとでも楽しい旅が出来たのは貴重な経験になったんじゃないかと思う。だってあのユウリですら、口角を緩めてたんだもの。
「ちょうど雨も止んだな。これからピラミッド探索に備えるぞ」
 ルカが去ったあと、まるでタイミングをあわせたかのように雨が止んだ。私は気を引き締めるため、自分の頬を軽く叩く。
 城の外に出ると、洗い立ての太陽が私たちを出迎えてくれた。そう、まるでこれから向かう未知の場所へと足を運ぶ私たちに、エールを送っているようだった。

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