第1部
アッサラーム〜イシス
不思議な歌
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顔のナギが私の肩にぽんと手を置いた。
「反応するだけ時間の無駄だ。いいから、早く帰ろうぜ。ルカもそろそろ戻ってるかも知れねえし」
いや、好きでやってるわけじゃないし!! そう思いつつも、私は必死で怒りをとどめた。
確かにナギの言うとおり、ルカが待ってるかもしれない。急いで戻らなければ。
「あっ、ねえ! 今入ってきたの、るーくんじゃない?」
『え?!』
シーラの言葉に反応した私とナギの声が重なる。彼女の指差す方向を見ると、ちょうどずぶ濡れになったルカが慌てて大広間に入ってくるのが見えた。
「ルカ!! こっちこっち!!」
私が呼ぶと、ルカはすぐにこちらに気づき、走ってやってきた。なんて良いタイミングなんだろう。
「るーくん、大丈夫? びしょ濡れだよ!」
シーラはどこからか取り出したハンカチでルカの頭や顔を拭いた。それでも拭ききれず、髪から雨粒が滴り落ちている。
「だっ、大丈夫ですから! それより皆さん、もう女王様にはお会いになったんですか?」
「ああ。ちょうど帰るところだ。そっちはどうなんだ?」
ユウリが聞くと、ルカは表情を曇らせた。
「すみません、一通り町を聞いて回ったんですが、皆さんが求めてる情報は得られませんでした」
けれど、ルカは一呼吸置くと、ですが、と一言付け加えた。
「たまたまいた別の旅商人から、今の世界の情勢について話を聞くことができました。お聞きになりますか?」
「なるほど、それは興味深いな」
その言葉を聞いて、ユウリの目が即座に光った。確かに今世界がどうなっているのか知るのは重要なことだ。
「参考になれば良いのですが……。まず、ロマリアの西にあるポルトガという町を知っていますか? あそこは今輸入品がなぜか出回らず、景気が停滞しています。あと、もともと船舶業が盛んだったんですが、最近海でも魔物が急増してるため、船で行き来する人たちが少なくなってて、当分定期船の出港を停止してるようです。もし船を利用されるならポルトガの王様に直接訪ねた方がいいかもしれません」
「ああ。これから先船での移動は必須だからな。その情報があるだけでも助かる」
「あと、遥か東にあるサマンオサという国では、ここ数年他国との交流を一切断ってるそうで……」
「なるほど、不自然だな。王が変わったという話は?」
「王様が変わったという話は聞かないですね。何しろサマンオサ自体もともと鎖国的でしたから。たまたまサマンオサに立ち寄った旅人から話を聞くことができただけで、詳しいことはわかりません」
「サマンオサか……。確か俺の親父と同じくらい有名な英雄がいたような気がするが……」
「あ、ひょっとしてもう一人の英雄サイモンさんのことですか? オルテガ
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