第8章:拓かれる可能性
第256話「攻略作戦」
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」
元々、もっと緻密な作戦や、綱渡りのような戦術が必要だと思っていた。
だが、それらを全て精神論だけで補えると分かれば気分的にも楽だ。
依然勝つには難しすぎる相手だが、既に皆は希望に満ちていた。
……これもまた、イリスの遺した“可能性”のおかげなのかもしれない。
「―――それじゃあ解散だ。ここに来ていない人にも伝えておいてくれ」
その後、しばらく細かい質問に優輝は答え、話は終わる。
まだ目覚めていない者や、各方面へ現状の報告などの用事がある者への情報共有はリンディ達に任せ、他は休息に入る。
「……ふぅ……」
「お疲れね」
「まぁ、計何十年か振りに神としての態度を演じていたからな……。良くも悪くも、僕は人に染まっていたらしい」
優輝も一息つき、そこへ優奈が話しかけてくる。
「でも、プラスの方が大きいでしょう?」
「……まぁな。人の生を過ごしたおかげで、お前と言う特殊な分霊も得たからな」
優奈は優輝の半身……つまり分霊だ。
尤も、本体そっくりではなく、こうして“女としての可能性”を内包しているため、かなり違う性格をしている。
「先に言っておくわ。今の貴方ではイリス本体には勝てないわよ」
「知っている。……同時に、再びお前と一つになれば勝機がある事もな」
「なんだ。把握していたのね」
特殊な分霊……それはつまり、普通とは違う事になる。
普通であれば力が削がれる事のない分霊だが、優奈の場合は違った。
神としての力も分けているため、本来の優輝よりも弱くなっているのだ。
だが、再び一つになればそれも元に戻る。
「……悪いが、一つに戻るつもりはない」
「っ、自分から“可能性”を捨てる気?」
「お前こそ、帝に何も言わずに消えるつもりか?」
同時に、それは優奈の消滅を意味していた。
今回ばかりは、優輝も優奈も一つになって無事で済む“可能性”が見えなかった。
「な、んで、帝がそこで……」
「お前がどう思っているにしても、あいつはお前を想っている。それに気づいていながら、勝手に消えさせる訳にはいかん」
「………」
広い目で見れば、ただの自問自答だ。
だけど、既にお互いに別の存在だと認識していた。
だからこそ、優輝は優奈の消滅の道を選ばない。
「二兎を追う者は一兎をも得ず……既に僕は一兎を追っているんだ。その上で、先の見えない“可能性”を掴む事は出来ない」
「……そう。さすがに、限界なのね……」
「限界は超えられるさ。……だけど、だからと言って自分から無理しても“可能性”は掴めない。分かっているだろう?」
「それは……そうね……」
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