【 起 】
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った。
(正論で言えば明彦の言う通りだろう。タルタロスで未知の存在に関わることはリスクが大きい。)
しかし、この『猫もどき』の愛嬌のある顔を見ていると、このまま捨て置くことに迷いが生じてくる。
「どう思う?」
困った挙句、美鶴は『彼』に意見を求めた。
「そうですね・・・。」
『彼』は考えながらそう返すと、おもむろに『猫もどき』に歩み寄り、そして無造作に抱き上げた。幼稚園児並みのサイズで軽そうだ。毛がふわふわしている。
「おい!」
真田が驚いて声を上げる。
「大丈夫なのか?」
美鶴も心配げに声をかけた。
「まあ、大丈夫そうです。・・・とりあえず次のフロアへ移動しましょうか。」
彼は穏やかにそう言うと、階段の方に平然と歩き出した。皆はあっけにとられたまま、つられたように後に続く。
階段を上って次のフロアへ。
そこで一同はさらに驚くような光景に出くわした。
空には星が光っている。波の音に目を向けると海が見えた。海岸がすぐ目の前だ。緩やかに風が流れ、潮のにおいがする。
いつの間にかタルタロスの外に出ていた。
「えっ? なにここ。」
ゆかり は思わず声を張り上げた。美鶴もあり得ない光景に呆然とする。
その時、『彼』がスッと腕を伸ばし、前方を指さした。
「ムーンライトブリッジが見える。」
そこには、見慣れたフォルムの橋がライトアップされていた。
「そんな・・・ここはタルタロスの外なのか?・・・あれだけ塔を上ってきたのに、その上が地上に繋がっているというのはどういうことだ。」
美鶴は困惑して声を洩らした。
「風花。何かわかる?・・・・・・・風花?」
ゆかり が風花に呼びかける。・・・しかし返事はない。いつの間にか通信は途絶えていた。
ゆかり は「だめだ」と言うように首を振って、みんなを見まわした。
「くそっ。どうなってる。嫌な予感がする。」真田が眉をひそめる。
美鶴も予想外の事態の連続に戸惑い、不安を覚えていた。この状態での不用意な行動は危険だ。
「いったん戻りましょうか?」
『彼』の言葉に、反射的に「そうだな。」と応じて、美鶴はもと来た方に振り向いた。
そこで一同は再び驚きの声を上げた。
たった今、上ってきたはずの階段がどこにも無かったのだ。そこはただ砂浜が広がっているだけだった。
「わけわかんない。どういうこと?」ゆかり が嘆く。
「わからない・・・が・・・どうもここはタルタロスではないらしいな。」
美鶴はそう答えることしかできなかった。
「対岸を見てみろ。いつの間にか影時間が終わってるんじゃないか?」
真田の指摘の通り、影時間には全ての照明が消えるはずなのに、ムーライトブリッジはライトアップされ、対岸の街の明かりも平常通りに見えている。
「そんな、いくらなんでも早過ぎじゃあ・・・。」と
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