ちいさなしまのおはなし
おもちゃの町
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しかしここにいるのはまだ進化できないデジモン達だけ。
上級生に部類されるとはいえ、蝶よ花よと大切に育てられたお姫様に、戦う力などない。
「ね、ねえ!この箱から出られないの?」
『さっきっからやろうとしてるんだけど……』
『ワテら全員で力合わしたんですけど、びくともせえへんのや』
見かけによらず頑丈らしい。
進化ができなくとも、デジモン達で力を合わせれば、もんざえモンを倒すチャンスぐらいは作れると思ったが、その可能性は捨てたほうがよさそうだ。
『!何か来る!』
どうしよう、と途方に暮れていたら、パタモンの大きな耳が何かを聞きつけた。
もんざえモンか、と思いミミ達は開きっぱなしだったドアを閉め、咄嗟に身を隠す。
ブイモンが代表してそっと窓から顔を覗かせたら、先ほど何処かへと行ってしまった治が、通り過ぎていくのが見えた。
「お兄ちゃん……」
今すぐにでも駆け付けて、抱きしめてもらいたいのに、今の治は感情を抜き取られてしまっている。
賢が治の前に飛び出していったとしても、賢のことが分かるかどうか……。
「……ううっ」
『っ、ケ、ケン……』
自分のことが分からないかもしれない、と思ったら底冷えするような恐怖が沸き上がった賢の目に、涙が滲む。
何でも知ってるお兄ちゃん、何でもできるお兄ちゃん。
両親の都合で離ればなれにされてしまったけれど、賢にとってお兄ちゃんは大切で、大好きな存在だ。
賢がテストでいい点を取れば頭を撫でて褒めてくれたし、悪いことをすればそれがどうして悪いことなのか、賢の目線まで腰を下ろして諭してくれる。
でも、そのお兄ちゃんはもう何処にもいない。
「……ふ、え……!」
「ヒ、ヒカリちゃん!?」
『ヒカリっ!』
そして奇しくも、賢い子と同じように兄が大好きな女の子は、悟って、泣いてしまった。
もう、大好きな兄に会えないという、最悪な想像が過ってしまったのである。
大輔とパートナー達がヒカリと賢をそれぞれ慰めるが、溢れる涙を止めてやることができない。
ぷつん、とミミの中で何かが切れた。
「……パルモン、行きましょう」
『え?』
妙に落ち着いた声色で、パルモンに声をかけてきたミミに、パルモンは虚を突かれながら顔を上げた。
さっきまでもんざえモンと対峙することを躊躇していたとは思えないほど、ミミの顔は険しかった。
その視線の先にいるのは、まだ小学2年生の最年少3人。
うち2人はめそめそと泣いており、残った1人は途方に暮れている。
どうしたの、ってパルモンが声をかける前に、ミミは泣いている2人と慰めようとしている1人に向かって、膝に手をつきながら口を開いた。
「みんな、聞いて」
「ミミさん……?」
「これからアタシとパルモ
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