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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
おもちゃの町
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ヌメモンに指示された通り、おもちゃの町に向かおうとしたのだが、ミミとパルモンが待ったをかけた。

「ねえ、もんざえモンって分かる?」
『うん?知ってるよ?』
『アタシ達がこれから行くおもちゃの町の町長だもの。知らないはずないわ』
『もんざえモンがどうかしたのー?』

ミミがブイモン達に尋ねれば、当然知っているという言葉が返ってきた。
やっぱり知ってるんだ、という言葉を飲み込んで、ミミは自分達が今しがた体験したことを彼らにも話しておく。
情報というのは、みんなで共用して初めてその価値が発揮されるのだ。
自分の胸だけに秘めているのは、仲間を危険に晒す恐れがある。
最初こそ、ブイモン達はおもちゃの町の心優しい町長がミミ達を襲ったなんて信じられない、と言った顔をしていたが、パルモンも同じことを主張してしまったら何も言えない。
でもなぁ、って互いの顔を見やるブイモン達と、まだもんざえモンに会っていないから、いまいち理解しきれていない大輔達。
とにかく異変がないかだけでも確かめよう、というパルモンの主張が採用され、子ども達は再び歩き出した。


進むにつれて深くなっていく林はいつしか森となり、くすんだ緑の中に不自然な色とりどりのお城が顔を出している。
まるで遊園地のような外観に、ミミの心が一瞬浮足立ったが、もんざえモンと他の仲間達のことを思い出して頭(かぶり)を振った。
今、この場にいる1番年上の子は、ミミだけなのだ。
ミミと一緒にいるのはみんな小学2年生の子達と、デジモン達だけ。
ここに来るまで太一達が引っ張ってくれるのが当たり前だったのに、ミミは今一緒にいる小学2年生の最年少の子達と一緒についていくだけでよかったのに、その太一達は何処にも見当たらない。

(この際光子郎くんでもいいから、会えればいいのになぁ……)

心細いことこの上なかった。
自分よりも頭一個分も小さい同級生の男の子だが、進化を果たしている彼でも今のミミにとっては拠り所である。
進化した4体のうち、完全体を相手に成熟期で奮闘したのは、光子郎のテントモンだけなのだ。
光子郎とテントモンがいてくれれば、少しは力強かったのに。
でも今はいない人のことを考えても仕方がない。
今この場で小学2年生の最年少3人を守れるのは、小学4年生のミミだけなのだ。
……あの時だって。

「ミミさん?」

思考の海に引きずられていたミミは、下からかけられた声で意識を急浮上させる。
何も言わず、一点だけを見つめてぼんやりしていたミミを不思議に思ったヒカリが、声をかけてくれたらしい。
大輔と賢も、そのパートナー達も、ミミを見上げている。
その目に浮かんでいるのは……不安だった。
いけない、とミミは無理やり笑顔を作って何でもないわよ、って気丈に振る舞う。

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