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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
おもちゃの町
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り言わない子である。
それが一体どういう風の吹き回しなのだろうか。

「アタシだってお姉さんだもん。小さい子が泣いているの、黙って見てるほど鬼じゃないのよ」

なんて口では言っているが、“ソレ”を自覚しだしたのは、つい最近である。
何でもやってもらっているお姫様は、しかし自分はお姫様ではないことはちゃんと分かっていた。
ママもパパも甘やかしてはくれるけれど、それと同時に自分でできることは自分でしなさいっていう躾を怠らなかったのだ。
将来お嫁さんになった時に困らないように、って一通りの家事をちゃんと教えてくれたのだ。
だからお皿洗いだってちゃんとやるし、お部屋のお片付けだって自分でする。
お料理だってできる。……味の保証はできないが。
あれ欲しいこれ欲しいって口にはしても、誰かにやってもらってまで欲しいわけじゃない。
自分で手に入れるから価値があるのだ。大切に扱うのだ。
ミミはもちろん、お友達からもらったものも、自分で手に入れたものと同じぐらい大切にできる優しい子だが、それは今は置いておこう。


あれは、確か空のピヨモンが初めてバードラモンになった日のことだ。
狂暴化したメラモンから逃れるために、干上がった湖にあった朽ちた船に避難するために、ミミ達は走っていた。
上級生達は皆逃げ惑うピョコモン達を先導し、パニックにならないように声を張り上げながら言葉をかけていた。
ミミもピョコモンに混じって逃げていた時、治に腕を掴まれたと思ったら、賢達最年少の子達を連れて行ってやってくれと頼まれたのである。
自分達はピョコモン達を落ち着かせるのに手いっぱいだからと。
え、え、っておどおどしながら、でも、でもって狼狽えていたミミに、治は苛立たし気にこう怒鳴ったそうだ。

《もう4年生だろう!君だってお姉さんなんだぞ!もしも僕達がいなくなったらどうするつもりだ!!》

その時はその剣幕に圧倒されて、言われるがままに最年少3人を連れて船に避難した。
船についてから一息ついて、そして気づいた。
頼るものがミミしかいなかった最年少達が、必死になってミミにしがみついていたことに。
小さな手が、ミミのスカートをしっかりと、でもぶるぶると震えながら掴んでいるのが、嫌でも伝わってきた。
その時の、何ともいいようのない気持ち。

今なら分かる。あれが、守らなければという気持ちなのだと。

きっとミミが下級生だったら、同じように守ってもらえたのだろうなっていうのは、ただの幻想にすぎない。
今のミミはどうあがいても4年生で、小学生を2つに分けたら上級生の部類になって、そろそろ下級生の面倒を見ましょうって言われるような年だ。
ミミには妹もいなければ姉もいないから、面倒を見るというのがどういうことなのか、ミミはまだ分からなかった。

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