第二部
第二章 〜対連合軍〜
百 〜シ水関の攻防〜
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知れぬ。
だが、このまま籠もっていてもじわじわと戦力を削られるばかり。
……やむを得ぬか。
「雛里」
「はい」
「予てからの手筈通り、良いな?」
「あわわ、ご主人様……」
青ざめる雛里。
「直ちにかかれ。それから、洛陽にも使者を出しておけ」
「ぎ、御意です!」
あたふたと城壁を降りていく雛里を見送り、兼定を抜いた。
そして、朱里の脇に立つ。
「ご主人様?」
「皆の者、此所が踏ん張りどころだ。何としても、防ぎ切れ!」
その姿は、敵陣からも認められた筈だ。
敵にその気があらば、矢石を集中させて私を狙ってくるであろう。
……ほう、雪蓮の軍が向かってきたようだな。
「歳三! 良い度胸じゃの!」
祭が、弓を手に叫んだ。
「兵の先頭に立つ覚悟なくして、何が将か。お主も同じであろう?」
「はっはっは、相変わらず痛快な男よの。だが、今は敵味方、容赦はせぬぞ!」
そして、祭は矢を番えた。
「はっ!」
放たれた矢は、寸分違わず私の眉間目がけてきた。
「ご主人様!」
朱里が、堪らず悲鳴を上げる。
「む!」
兼定で矢を叩き落とすと、祭が笑みを浮かべた。
「流石じゃの」
「ふっ、お前もな」
明命の姿は見えぬが、恐らく周囲の警戒に当たっているのであろう。
そして、やはり雪蓮は姿を見せぬな。
「ならば……これはどうかの?」
そう叫ぶや否や、祭の手から数本の弓が放たれた。
む、速い!
今度もまた、私の急所を正確に狙ってきているのがわかる。
祭め、芝居にしては些かやり過ぎではないのか?
と。
向かってきた矢が、不意に軌道を変え、落下していく。
「……兄ぃには、指一本触れさせない」
弓を構えた恋が、いつの間にか近くに立っていた。
「くっ、流石は飛将軍じゃな」
「……兄ぃ。大丈夫?」
「ああ、助かった」
「おお、呂布将軍だ!」
「呂布将軍さえおられれば、勇気百倍だ!」
兵らの士気が、一度に高まったようだ。
「よし、儂らば一度引いて体勢を立て直す! 続けぃ!」
祭の号令で、孫策軍は関から離れていく。
ともあれ、もう一踏ん張りだな。
日没になっても、敵軍の攻撃は続いていた。
袁術が、諸侯を急かしているのであろう。
だが、灯りがなくては矢石も当たるものではない。
「ご主人様!」
「おう、ここだ」
「はい。準備の方、整いました」
息を弾ませながら、雛里が告げた。
「よし、直ちにかかれ」
「御意です!」
「朱里。お前も雛里と共に」
「は、はいっ!」
二人の指示で、関の中が密かに動き始めた。
「恋。私は最後まで残るが、お前も良いか?」
「…………」
む、返事がない。
聞こえぬ程の喧噪はない筈だが。
……ふと、
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