第二部
第二章 〜対連合軍〜
百 〜シ水関の攻防〜
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ど……」
傍らの二人も困惑しきりだ。
良く見ると、車輪がつけられている。
なるほど、移動式の櫓という事か。
「朱里。櫓の上にいる射手を狙わせるのだ。矢の飽和攻撃には耐えられまい」
「御意です!」
しかし、敵にもなかなかの発明家がいるようだな。
朱里に作らせた連弩もそうだが、この時代でもある程度技術開発が必要な筈だ。
そのような先見の明がある……恐らく、華琳の麾下であろう。
「雛里」
「はい」
「この戦闘が終わってからで構わぬ。あれを作ったのが何者か、疾風と共に探るのだ」
「御意です。……ご主人様、あれを」
櫓の後から、背の低い不格好な車が進んできた。
望遠鏡を取り出し、観察してみるか。
……ふむ、大きな石を大量に積み込んでいるな。
「見てみるか」
「あ、はい」
望遠鏡を覗き込んだ雛里の顔が、次第に青ざめていく。
「ご、ご主人様! あ、あわわ……」
「あれが何か、わかるな?」
「は、はい。た、大変です……すぐに朱里ちゃんや皆さんに知らせないと」
慌てて駆け出す雛里。
確かに、あれを持ち出されれば危ういな。
「誰か、霞をすぐに呼んで参れ」
「ははっ!」
「……いや、良い。私が参ろう」
駆け出そうとした兵士を押し止め、持ち場に向かうように伝えた。
防戦の指揮に当たっている最中だ、混乱を助長するような真似は慎まねばな。
「構えて、撃って下さい!」
朱里の号令で、連弩から大量の矢が放たれる。
移動式櫓や投石機に向けて。
……が。
返礼とばかりに、敵陣からも雨霰と矢と石が我が陣へと飛んで来た。
先日の戦では恐るるに足りぬものであったが、今日は違う。
巨大な石は城壁を削り、少しずつ穿っていく。
一方、櫓から放たれた矢も、城壁の上に陣取る我が軍の兵らを確実に傷つけていた。
高低差があっての優位性が失われた以上、当然の事とも言えるが。
無論その程度ですぐに瓦解するような事はないが、これを繰り返されればいずれは深刻な事態に陥るであろう。
櫓も投石機も、厚手の板を巡らせて此方の矢を防ぐ構造になっているようだ。
「はわわ、矢が通じません!」
「朱里、慌てるな。敵も矢石を放つ限りは姿を見せる、此方の矢が全く当たらぬ訳ではない!」
「は、はいっ!」
とは言え、兵らにも動揺が走っているのが見て取れる。
無理もない、絶対的な優位が崩れ去ろうとしているのだからな。
その間にも、ガツンガツンと石が当たり、壁を崩したり兵を倒していく。
櫓の方は連弩により矢の勢いを弱められたが、投石機が殊の外厄介な存在だ。
打って出て、あれを壊すか……?
いや、華琳の事だ、それは織り込み済みであろう。
寧ろ、罠を張り霞や疾風を捕らえる策を立てているやも
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