第二部
第二章 〜対連合軍〜
百 〜シ水関の攻防〜
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
翌朝。
「皆、おはよう」
「…………」
「…………」
む、朱里と雛里が何やら難しい顔つきをしている。
疾風(徐晃)は斥候に出ていて、霞は兵の指揮に当たっている為この場にはおらぬが、詰めている兵らも自然と顔が強張っていた。。
「二人とも、如何したのだ?」
「……あ、ご主人様」
「おはようございます」
慌てる様子もないが、深刻な表情は変えずに二人は私を見た。
「実は、少し気になる事がありまして」
と、朱里。
「ふむ。申して見よ」
「はい。……昨日の戦いなんですが、攻撃してきたのは曹操さんの軍だけでした」
「その通りだな、雛里」
「……ですが、私と疾風さんの調べでは、先陣を任されたのは曹操さんだけじゃありません」
なるほど、その事か。
「それで、朱里ちゃんに話したところ、やっぱりおかしいんじゃないかって」
「うむ」
「……孫策さんは袁術さんの実質的な麾下ですし、その命に背くとも思えません」
「その通りだ。それに、雪蓮は自ら先頭に立つ事を好む……となれば」
私の言葉に、二人が首肯する。
「疾風さんにその事を話したところ、すぐに調べてみると言って下さったんです。……ただ」
「私への報告が事後になった事か、雛里?」
「は、はい」
少し怯えたように、眼を伏せる雛里。
「気に致すな。お前と疾風に一度は任せると申したのは私自身、都度伺いを立てるには及ばぬ」
「あ、ありがとうございます」
……しかし、雪蓮か。
自身の勘働きも尋常ならざるものがあるが、その上に軍師として周瑜が控えているのだ。
何やら、企んでいるやも知れぬな。
旗は確かに、連合軍の中に翻っている。
常識で考えれば、名を上げたい筈の雪蓮が旗を残していく筈がない。
そして、私とは直接戦う意思はない……となれば。
いずれにせよ、その動向を把握しておくに越した事はあるまい。
「朱里。この事は禀らにも知らせておくように」
「御意です」
「……ご主人様。孫策さんが洛陽を狙っているとお考えですか?」
「可能性が皆無とは言えまい。このシ水関を抜く事が叶えば別だが、それが如何に至難の業であるか……そう考えればな」
「は、はい」
雛里はまだ、釈然とせぬか。
だが、雪蓮は形振り構ってはおられぬのもまた事実。
……まだまだ、この二人には甘さが抜けきらぬところがある。
それを承知で連れてきた以上、私が釣り合いを取らねばなるまい。
明命を介した言葉を疑う訳ではないが、これは遊びではないのだからな。
月や殿下に万が一の事があってはならぬのだ。
敵軍に動きのないまま、数日が過ぎた。
「疾風、雛里。敵軍はどないな雰囲気や?」
「袁術や劉ヨウらは焦れているらしい。だが、軍議を開いてもこれと言って進展が得ら
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ