第1部
アッサラーム〜イシス
イシスの女王
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でしょう」
「では早速訪ねてみます。お気遣いありがとうございます」
「とんでもない。我が王家の所有地に魔物が蔓延っているだけでも厭わしいのです。それを一掃してくれるのなら、魔法の鍵だけでなく、そこにある宝もあなた方に差し上げますわ」
「いいのですか?」
「ええ。その代わり、またここへ来て、わたくしの話し相手になってくれませんか? あなたのように価値観の合う殿方がなかなか周りにいないのです。もしよろしければ用事を済ませたあと、またこちらにいらしてもらっても宜しいですか?」
「はい、構いませんが……」
「ありがとう。ではお待ちしていますわ」
女王様はユウリとの約束をかわすと、誰もが見惚れるような笑みを浮かべた。
それにしても、王家の宝までくれるなんて、女王様ってなんて寛大なんだろう。きっとそういう内面的なところも含めて、人々に好かれるんだろう。
私たちは再び平伏すると、女王様の側近の人に考古学者がいる場所を教えてもらい、玉座の間を退室した。
「ユウリ、さっきはありがとう」
考古学者がいるという、お城の離れに向かう途中、私は歩きながら、さっきユウリにフォローしてもらったお礼を言った。
お礼を言われた張本人は私の方を向くと、蔑むような顔でため息を一つつく。
「お前が王族に意見するなんて百年早い」
う……、そこまで言わなくてもいいのに。でも実際、ユウリのお陰であの場はなんとかごまかせたから、二の句は告げない。
そうこうしてる間に、離れにたどり着いた。離れと言っても建物の作りはしっかりしていて、四方の壁に窓は一つ。部屋の中は余計な飾りや柱などは一切存在せず、本棚と机、砂漠の町では必需品の水瓶のみ。だが、何かを作業するには最適な空間となっていた。
その部屋の机に向かって、なにやら分厚い本を見ながら、手元にある羊皮紙にペンを走らせている男性がいた。いや、よく見るとペンではなく、何やら小さい炭のようなもので何かを書いている。
普段手入れしてないのか、無精髭が目立つ。あちこち白髪が入り交じっているが、意外にもまだ三十歳前後に見える。
男性は私たちが声をかけても気づかないのか、ずっと机にかじりついたままだ。何度か呼んでいるのだが、こちらを見向きもしない。しびれをきらしたのか、急にユウリがずかずかと部屋に入り、男性のすぐそばまで行くと、息を大きく吸い込んだ。
『ピラミッドを調査してるのはお前か!?』
「わあぁぁぁっっっっ!!??」
今まで一度も耳にしたことのないくらいの大音量で、ユウリが叫んだ。さすがの男性も、いきなり耳元で叫ばれて驚いたのか、体を大きく弾ませると、椅子に座ったまま後ろに倒れた。
ガッターン!!
いやいや
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