第一章
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海女房
岩手の三陸の方の話である、ある漁村で女達が心配な顔をしていた。
「うちの亭主帰って来ないよ」
「うちもだよ」
「海が荒れてるから」
「若しかして」
「そんなこと言うものじゃないよ」
こうした話をしていた、海に出た舟のうち一艘戻ってこないものがありその舟に乗っていた五人の漁師の女房達が心配な顔をしているのだ。
それでだ、村の長老がその女房達を見かねて提案した。
「それなら占ってもらうか」
「巫女さんにだね」
「無事かどうかだね」
「占ってもらうんだね」
「そうしてもらおう」
こう提案するのだった。
「これでどうだ」
「そうだね」
「それがいいね」
「じゃあ今から」
「巫女さんにお願いしようか」
女房達もそれで納得した、それでだった。
実際に占ってもらった、するとだった。
巫女はおかしなことを言った、そのおかしなことはというと。
「皆助かってるにしても」
「助かってる?」
「それにしても?」
「というと」
「おかしな助かり方で」
それでというのだ。
「おかしな人に連れて来られるらしいよ」
「わからないこと言うね」
「どういうことだよ」
「助かってるならいいにしても」
「それでも」
「おかしな人って誰だい?」
「一体」
女房達はそのことはわからなかった、だが亭主達が助かっていると聞いてだった。
それならいいとして亭主達が帰って来るのを待つことにした、その翌日の昼にだった。
一人の女がふらりと村にやって来た、そのうえで村人達に言ってきた。
「この村の人達を連れて来たよ」
「まさか」
「それはまさか」
「今帰って来ない」
「その漁師の人達だよ」
見ればその女は老婆だった、長い白髪で皺だらけの顔で青い海を思わせる色の着物を着ている。見れば身体が濡れている。
その腰が曲がった老婆が彼等に言ってきたのだ。
「海で溺れていたから助けて一旦わしの家に呼んでね」
「それでか?」
「ここに連れて来てくれたのか」
「そうなのかい」
「そうさ、こっちにね」
老婆が言うとだった、海の方に。
一艘の舟が出て来た、すると誰もが驚いた。
「おい、五人共いるぞ」
「皆無事だぞ」
「どうなったかって思っていたら」
「皆助かったんだな」
「そうだったんだな」
「あんたが助けてくれたのか」
「急な時化で海が荒れてね」
老婆はさらに話した。
「そしてだよ」
「そうしてかい」
「わざわざ村に連れて来てきてたのかい」
「そうなんだな」
「そうさ、それでね」
老婆はさらに話した。
「助けた後一旦わしの家で介抱して元気になったからね」
「ここまでか」
「連れて来てくれたのか」
「舟まで用意してくれて
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