第11話「I'm a テイルイエロー!!」
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メリアンを友と呼び、歩み寄る善人に見せかけて、その実殺しているサイコパスだ、だのあっという間の手の平返し……。……俺は臆病者だ……みんなに嫌われるのが怖くて、仲間を傷つけるのが怖くて、周りから恐れられるのが恐ろしい…………弱い人間なんだよ……俺は……」
「…………どうして……どうしてわたくしの顔を見て話さないのですか!!」
次の瞬間、高らかな音と共に頬に痛みが走った。じんわりと広がっていく熱に頬を抑え、顔を上げると、慧理那が手を振りかざした後だった。
そう、俺は慧理那に頬を叩かれていたのだ。
「……そんなの、いつのも千優さんらしくありません…………今、貴方は自分が師匠と呼ばれるのは間違っていたと言いましたが……それは、貴方を慕い、尊敬していた人への侮辱に等しいものです…………」
「…………えり……な……」
顔を上げると、慧理那の翡翠のような瞳は、涙に濡れていた。
「それに、悪夢が何ですか!世間の風評が何ですか!そんなものを理由にして、貴方は今、恐怖に背を向けて、逃げようとしているだけではありませんか!!」
「ッ!!」
そう、まさに慧理那の言うとおりだった。俺は今、逃げている。今まで難なく立ち向かって行けた恐怖という感情から背を向けて、尻尾を巻いて逃げ出しているのだ。そのために、悪夢や風評を理由にしているに過ぎない。慧理那はそれを見抜いていたのだ。
「それでも、まだ前を向いて、走り出そうとしないのなら……あなたはもう、私の師匠ではありません!!」
そう叫ぶと、そのまま走り去ってしまう慧理那。屋上の階段を走り下りて行ってしまったその小さな背中を見守りながら、俺は呟く。
「ヒーローとしても……兄貴としても失格で、その上、弟子にも見限られちまったか…………」
『さあ、どうだろうな……。少なくとも、彼女が誰よりも近くで、誰よりも真剣にお前の事を見ていたのは、間違いないだろうよ……。ついでに言えば、そこまで恐怖に囚われていながら、「ツインテイルズを抜ける」とは言わなかったり、俺ヒーローフォンを手放したりしないところは素直に評価してるんじゃないか?』
「…………そう、かな……」
叩かれた左頬に手を当てると、まだ痛みが残っていた……。
□□□□
階段を駆け下り、屋上から降りてきた慧理那。耳でその様子を窺っていた尊が問いかける。
「お嬢様……これでよろしかったのですか……?」
その問いに慧理那は、背を向けたまま答えた。
「これで……良かったのですわ…………これ以上、あんな千優さんは見ていられませんもの……これが彼の為でもあるのですわよ…………」
「お嬢様…………」
「……さあ、行きましょう尊。部室で皆様が待っていますわ
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