暁 〜小説投稿サイト〜
俺、リア充を守ります。
第8話「赤・蟹・襲・来」
[10/19]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 彼になら、お嬢様を任せられるだろう。自然とそんな風にさえ思えていた。

 アルティメギルがこの世に現れてから、慧理那はもう何度もその身を狙われており、本来ならば気軽に出歩くのは危険だ。

 しかし、今回は仲足が一緒だ。いざとなったら彼が戦ってくれるだろう。

 そんな事を考えつつ、尊は慧理那から視線を離さない一方で、目端に映すように器用に行き交う男たちをも観察していた。

 ライフスタイルが変化し、結婚適齢期という言葉が薄れて久しい昨今だが、それでも誰もが一度は、年齢とともに結婚を焦る時期があるものだ。

 二十八歳。桜川尊、最終決戦ファイナルバトルの予感──―。

 一刻も早く結婚したいと願う彼女にとって、人間観察は婚活に等しい。

 最近この焦り方が過度だった影響で、例のジェラシェードとかいう怪物に取り憑かれ、身体を乗っ取られかけたので、焦らず慎重に行かなくては。

 もっとも、職務は結婚願望を差し置いての最優先事項である。耳につけたレシーバーに受信を告げるノイズが走った一瞬、彼女はプロの顔になった。

『メイド長!敵襲です!!』

 部下のメイドの切羽詰まった叫び声が聞こえ、尊は瞬時に駆け出す……と、両手に紙袋を抱え、こちらに向かう慧理那の姿があった。

「お嬢様、仲足は?」

「尊?千優さんなら、先程お手洗いに行くと……」

 最後まで聞くまでもなく、慧理那をお姫様抱っこで抱え上げると、わき目もふらずフロアを駆け抜け、階段へ辿りついた。

「お嬢様、舌を噛まないよう、お気を付けください!」

 子供並みの体重とはいえ、人一人を抱えたまま、階段を一気に飛び降りる。

 三階なので踊り場を合わせて都合四度。その超人的な体術を披露し、一階に降り立つやいなや息も乱さず再び走り出す。護衛主任を任された尊が、存分に健脚を発揮する。

 丁度開いていた自動ドアに身体を滑り込ませ、駐車場に躍り出た時……尊は、一歩遅かったかと歯噛みした。

「くそ、先回りされたか…………!」

 これまでも、何度も目にしてきたアルティメギルの戦闘員たち……仲足が「アルティロイド」と呼んでいた黒ずくめの不気味な怪人たちが、甲高くモケー!と叫びながら立ちはだかる。

 そして、その後ろから悠然と歩いてきた怪人は、直立した赤蟹のような姿をしていた。

「ほう、これはなかなかどうしてハイポテンシャルな幼女……これだけの強力なツインテール属性を持つ以上、あ・れ・もさぞかし素晴らしかろうな!」

 ツインテール属性。

 理屈は分からないが、仲足から聞いた通り、この怪物たちが慧理那のツインテールを目的に襲ってきているのは、もはや疑うべくもなく明らかだった。

 本来ならば、髪形を変えさせるのが
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ