第8話「赤・蟹・襲・来」
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はピアスのチンピラの方へ向き直る男。
「じゃ、唯一直接殴られたお前に聞こうか。どうすれば勝てそうなんだ?」
「は!に、人数増やして……あとは武器もあれば……」
「人数に武器か……まったく、金を使うなぁ」
男が懐から紙の束を取り出す。
いや、それはただの紙束ではない。
全て一万円札の札束だ。
「もっと駒を増やすための資金に、バットやパイプなんかの調達代……まあ、これだけありゃ充分だろ」
チンピラたちの方へ何枚か、まるで紙吹雪でも撒くように札束を投げる男。
風と共に舞い落ちる札束を、チンピラたちは起き上がりながらひん掴む。
「計画変更だ。いいな、何としてでもあいつを仕留めろ。次に失敗したら、契約はなしだからな」
「「「は、はい!!」」」
新たな勢力が、人知れず動き始めていた。
□□□□
都内 某衣服店レジ周辺
神堂家に仕えるメイド、桜川尊は深く溜息をついた。
視線の先には、彼女の護衛対象であり、尽くすべき主である神堂慧理那……と、その慧理那が師匠と慕う友人にして尊敬するヒーロー、テイルドラゴンこと仲足千優が、双方笑顔でレジに並んでいる。
土曜日の早朝から、この大手衣服店には多くの客が並んでいた。
ゴールデンウィーク直前の週末。
2人が並んでいるのは、先日約束したTシャツ2枚を購入すると1つ貰える、日曜朝に放送されている特撮ヒーローの限定変身アイテムを入手するため……であり、この前の戦闘で擦り切れてしまった千優の衣服を買うためでもある。
Tシャツは、千優本人曰くコートの内側だったため洗濯すれば着れる、とのことだが、ズボンの方はボロボロになってしまっていたのである。
本題であった変身アイテムの方はというと、「限定品」であるため、キャンペーン期間内の店内は、子供にせがまれた親御さんや特撮ファン、更には転売目当ての者たちなどの熾烈な争奪戦が繰り広げられるのだ。
「やっぱりただの買い物とは言えないような気が……」
互いにどのヒーローのTシャツが似合うか、相談しながら(というより互いにそのヒーローの変身ポーズをとりながら)選び抜き、さらに新しいズボンを慧理那がコーディネートしていたら一時間、いや二時間近く経ってしまっていた。
まあ、メイドの自分が主人の交友関係にとやかく言うつもりはない。
むしろ、学校で生徒会長として、そして神堂家の跡取りとして肩肘張った生活をしている慧理那が、なりふり構わず熱中している趣味の理解者であり、慧理那本人も気にかけている節がある異性だ。
ついでに店の前の一件では、本来なら自分の仕事である美味しいところを譲ってやったくらいだからな。
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