第三章
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「そなたに勝負を頼みたい」
「勝負?」
「そなた舌が長いな」
「わしの舌は誰よりも長いぞ」
ベロ長はその長い舌を出しつつ答えた。
「それこそ何処までも続く程にな」
「そこまでか」
「お主は人であるな」
「如何にも」
大師は妖怪に落ち着いた声で答えた。
「それは」
「そのお主が勝てるか」
舌の長さでというのだ。
「果たして」
「それは勝負をすればわかる」
「そう言うか」
「では勝負をしてくれるか」
「わしは誰に対しても舌のことなら勝負を受ける」
ベロ長はその舌をベロベロと出しつつ言った、そしてだった。
舌を出した、一気に出したそれは恐ろしいまでに長かった。それでだった。
その舌を見てだ、大師はすぐに縄を出してその舌を縛った、そうして言った。
「さて、これでよいな」
「何をした」
「何ももない、縛ったのだ」
「そんなことをしたら舌が使えぬ」
「その様にしたのだ」
まさにそうだというのだ。
「拙僧はな」
「それは何故だ」
「何故も何もお主の悪事が過ぎるからだ」
こう言うのだった。
「それでこの会津の民が困っておるからな」
「二度と悪戯が出来ぬ様にか」
「舌を縛った」
まさにというのだ。
「そうした」
「そうだというのか」
「左様、二度と悪さをせぬなら縄をほどく」
大師は妖怪に告げた。
「約束出来るか」
「舌を縛られては口をまともに動かせぬ」
ベロ長はたまりかねた口調で言った。
「水を飲むことも食いものを味わうこともな」
「困るな」
「全く以て」
「なら約束するのだ」
ベロ長に穏やかだが確かな声でさらに言う。
「二度と悪さをせぬとな」
「約束する、もう二度とせぬ」
ベロ長も約束した、そしてだった。
大師に縄をほどいてもらうと這う這うの体で山奥にまで逃げていった。それからベロ長が悪さを下という話は残っていない。
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