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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
帝国領侵攻作戦(その1)
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民を圧政から解放すると唱えている。我々はそれを利用し反乱軍の補給に負担を強いればよいでしょう」
抑揚のない陰気な声でオーベルシュタインが説明を始めたが何を言いたいのか今一つよく分からない。周囲も似たような表情だ、ただトサカ頭の表情はより厳しいものになった。こいつ、何か悪い物でも喰ったか……。

「つまり、辺境星域において食糧物資を全て徴発する。侵攻してきた反乱軍はその政治スローガンから辺境星域の住民を見殺しにはできない。彼らに食糧を与え続けることになる」
「!」
彼方此方でざわめきが起きた。

「焦土作戦を執るというのか、しかし、それでは辺境星域の住民は……」
「短期間に反乱軍の補給を破綻させるにはそれしか方法は有りません」
メックリンガーの非難をオーベルシュタインは冷酷に切り捨てた。その姿に皆が黙り込む、会議室に異様な沈黙が落ちた……。

「小官は反対です」
トサカ頭が大きな声で反対を表明した。正気か、ビッテンフェルト。オーベルシュタインがあそこまで強気なのも元帥閣下の同意を得ているからだ。それをでかい声で反対だと……。俺だけじゃない、皆が驚いている。

「焦土作戦は帝国にとっても元帥閣下にとっても百害あって一利もありません。執るべき作戦ではないと小官は考えます」
「!」
トサカ頭、お前そこまで言うか。皆、元帥閣下とトサカ頭を交互に見ている。元帥閣下は明らかに不機嫌さを表情に出している。だがトサカ頭は臆することなくオーベルシュタインを睨み据えていた。

「元帥閣下はローエングラム伯を継承し宇宙艦隊副司令長官の顕職にあります。いわば宮中、軍の重職にある、そういって良いでしょう。ただ勝てばよい、そのような勝ち方を許される立場ではないという事を銘記すべきです」

元帥閣下の顔が白くなった。会議室の空気が嫌というほど重く感じる。ビッテンフェルト、お前、自分が何言ってるか分かってるよな。元帥閣下に自分の立場が分かっているのかと罵倒しているんだぞ。俺もお前に同じことを言いたい、トサカ頭、自分の立場が分かっているのか?

「閣下は宇宙艦隊の正規艦隊司令官に我々を登用しました、身分ではなく実力で選ばれたのだと思っております。多くの平民出身の、下級貴族出身の将兵にとって閣下は希望であり憧れなのです。しかし、今辺境星域に焦土作戦を実施すればどうなるか?」
「……」

「多くの将兵達が閣下に失望を抱くでしょう。所詮閣下もブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯らの門閥貴族と変わらぬ、弱者を踏み躙って己が栄達を図るだけの人物だと思うに違いありません」
「馬鹿な、私は彼らとは違う!」

心底不本意そうに元帥閣下が吐き捨てた。しかしトサカ頭を正面から叱責しないのは一理有ると思ったからだろう。司令官達の間でもトサカ頭の言葉に頷いて
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