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レーヴァティン
第百六十四話 幕臣その十二

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「どうしてもな、そしてこれからだな」
「私とですね」
「床を共にする、いいな」
「今宵は私だけですか」
「だから一人だ」
 彼女だけ呼んだというのだ。
「そういうことだ」
「私の時はいつもお一人ですね」
「そうだな、他の女は呼ばないな」
「それは何故でしょうか」
「お前との時はお前だけを前にしていたい」
「だからですか」
「他の女を交えることはしない」
 決してというのだ。
「それがだ」
「旦那様のお考えですか」
「そうする、あと夜はな」
「これからですね」
「楽しんでもな」
 それでもだというのだ。
「寝る様にする」
「そうされますか」
「寝ないとな」
「お身体によくないですね」
「世で色は敵というが」
 それが何故かもだ、英雄はお静に話した。
「何故敵かというとな」
「お身体を害するからですね」
「毎夜朝まで楽しめばな」
「眠らないことはよくないですね」
「そうだ、休まず楽しめば」
 まさにというのだ。
「やがてはだ」
「お身体を崩されますか」
「そうなるから敵となる、だからな」
「眠られる様にされますか」
「夜は女がいても床に早く入り」
「楽しまれてですか」
「それからすぐにだ」
 楽しんだ後はというのだ。
「休む様にする」
「そうされますか」
「楽しんでも溺れるつもりはない」
 それが英雄の考えだ、女にしても酒にしても好きで楽しむ。だがそれでも溺れることは決してしないのだ。
 それでだ、今も言うのだ。
「何があってもな」
「では」
「今宵も楽しもう」
 お静の身体を抱き寄せた、そうして。
 英雄は楽しんだが夜は寝た、それで朝起きてからすぐに隣に寝ている妻を見た。それからこう言った。
「人は寝ないで生きられない」
「左様ですね」
 妻は既に起きていた、それで夫に応えた。
「一日でも寝ないと辛いものがありますう」
「一日でも辛く二日になるとな」
「余計にですね」
「辛くてだ」
 それでというのだ。
「やがて身体に疲れが溜まり心にもだ」
「よくないですね」
「だからだ」
「寝ることですね」
「夜は必ずな、徹夜続きでは長く生きることも出来ない」
「それも無理ですね」
「身体にも心にも疲れが溜まってな」
 そしてというのだ。
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