第13話 その頃 トーマス・ミラー
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、両親から弟が生まれた旨の連絡と、ターナーからフェザーン商科大に飾られているオヒギンス氏の肖像画の写真が添付されたメールが届いていた。井上オーナーからも、僕とターナーがエコニアから旅立ってしまった為、半分愚痴のようなメールが来ていた。なんとなく心が温かくなった。
「ミラー、大佐の奢りなんだ。ジャンジャン飲もうぜ!」
クラーク上等兵が新しいジョッキを2つもって僕の隣に座る。一つを僕の手元に置くと、グッとジョッキを傾けた。僕はお酒はあまり飲みなれていない。正直、上等兵の様に飲み干せるかは分からなかったけど、彼の心遣いを無下にするのも気がとがめた。続くようにジョッキを手に取り、一気に飲み干す。
「おっ!ミラーはいける口だな。お姉さん、お代わり2つよろしく!」
そう言いながら大皿から料理を取り分け、ガンガンかきこむ。
「ガンガン食って、ガンガン飲んどけよ?ミラー。俺たちは身体が資本だからよ」
そう言われたら食べない訳にもいかない。僕も大皿から料理を取り分け、口にかきこむ。母さんの味付けより少し濃いめの料理は、不思議とのどの渇きを誘う。お代わりのジョッキが運ばれてくると同時に手に取り、のどを潤した。最前線へ行く以上、この中の何人かには、これが最後の晩餐になるのかもしれなかった。
ベテラン兵も含めて不安を吹き飛ばすかのように今を楽しむ光景は、どこか矛盾を感じつつも、軍曹を含めてみんながただの人間なんだと思える光景だ。そう考えると最前線へ行く不安も不思議と薄まっていった。
「よし、ちゃんと楽しんだようだな、ここからは自由時間だ。集合時刻は明日1300とする。羽目を外しすぎて警察のお世話になるような事が無いようにな」
古参兵たちは2次会に行くようだ。クラーク上等兵が誘ってくれたけど、僕は夜風に当たりながら酔いを醒ましたかった。ほろ酔いのまま、歓楽街を抜け、軍事宇宙港沿いの道を歩く。そよ風が不思議と心地よかった。しばらく歩くと緑地公園が見えてくる。僕はベンチに座り、視線を空に向けた。星空が不思議と心にしみる。
「あら、先客がいたみたいね。こんばんは」
「こんばんは」
声の主に視線を向けると、黒髪黒瞳の女性が、こちらを見ていた。
「近くで働いているんだけど、まっすぐ家に帰るのは寂しいから、この公園でしばらく過ごすの。隣良いかしら?」
そういうと女性は僕の隣に腰を下ろした。かすかに香る香水の香りがすごく印象的だった。
「新兵さんかしら?古参の皆さんは二次会に繰り出したってとこね。なんとなくわかるの。エルファシルの歓楽街は最前線に向かう兵隊さんたちの最後の癒しの場だしね」
そう言いながら、彼女はタバコを胸ポケットから取り出し、口にくわえた。こんな時にも日常習慣は抜けないんだろうか?軍曹のタバ
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