第一章
[2]次話
犬達と不思議な女の子
三船奈々子は短めの黒髪を後ろで束ねている素朴な感じの目の女の子だ、通っている田舎の小学校では元気のいい娘として知られている。曾祖父と祖父母、両親そして犬達と共に仲良く暮らしている。
犬は雌だが知り合いの人から貰ってきた祖父がジョンと名付けた、紀州犬と何かの雑種で全身白い。家に来てすぐに六匹の子犬を産んだが皆白犬だった。
その子達を見て祖父の藤吉はこう言った。しっかりした体格の白髪の男だ。
「生まれた子は暫くしたらな」
「どうする?」
「里親探してな」
こう奈々子に話した。
「引き取ってもらうか、ジョンは病院に連れて行って」
「そうしてなの」
「不妊手術してもらってな」
そうしてというのだ。
「子供はもう出来ない様にするか」
「どうしてそうするの?」
「いつも子供生まれたら大変だからだよ」
それでというのだ。
「もうな」
「そうするの」
「ああ、ずっと飼う為にな」
祖父は奈々子にこうした話をした、そうした話をしたが奈々子は家にいる時はいつもジョン達と一緒にいる様になった。同じ学校の子達田舎の山に囲まれた村の子達もよくジョンのところに来て遊んだ。
その中に黒のおかっぱで白いワンビース、小さくて左手にビーズの腕輪がある女の子もいた。
女の子はいつもジョン達と遊んだ、だが。
奈々子がその娘の話をすると皆見たことのない子だと言い大人には見えなかった、そして奈々子自身その娘を学校でも村でも見なかった。
それでその娘の話をすると父の弘和はこう言った。大柄な中年男だ。
「座敷っ子か?」
「あの妖怪の?」
「ああ、この辺りにもそんな話あるからな」
それでというのだ。
「若しかしてな」
「子供にしか見えないとか」
奈々子によく似た母の円も言った。
「考えてみたら」
「そのままだね」
祖母の佳代、もう髪の毛がすっかり白くなっている彼女も言う。
「それって」
「いや、山の神様だよ」
曾祖母の絹、もう八十を過ぎている彼女がここでこう言った。一家で夕食をちゃぶ台を囲んで楽しんでいる中での言葉だった。
「その娘は」
「座敷っ子じゃないの?」
「その娘は外で遊んでいるね」
「ジョン達と一緒にね」
「そうだね、座敷っ子は家にいてね」
そうしてというのだ。
「草が苦手なんだよ」
「そうなの」
「そうだよ、それで畳の上も歩けないんだ」
草から作られるそこもというのだ。
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