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魔法使いへ到る道
5.お泊りですよ
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で頭あらえるんだ」
 ワシャワシャと洗髪していると、バスタブに顎を乗っけたなのはが感心した風に言ってきた。
「なのははできないのか?」
「うん。体を洗うのはできるんだけど、頭はちょっと……目にあわが入るのがこわくて」
 あー、うん。分かる。
 どれだけ大きくなっても、石鹸が粘膜に触れた時の苦痛は薄まることはない。あの苦しみは子どもにはきついだろう。
「仕方ないな。なら今日は俺が洗ってやるよ」
「ホント!?わーい、ありがとー」
 こら、お湯の中で騒ぐな。こっちに水しぶきがとぶだろう。頭にかかってそのせいで流れた泡が目にぎゃあああああああ!
「?ケンジくん、どうかした?」
「なんでもない」
 即答。
 男には、意地を張らなくちゃいけないときってのがあるんだよ。
 涙をこらえつつ迅速にシャワーで泡を流し、気付かれないよう目を洗浄。赤くなってないといいが。
 子ども用の柔らかいスポンジにボディーソープをしみ込ませあわ立てる。腋や関節の内側など汗をかきやすい部位をしっかり洗う。背中もがんばって洗う。流して終わり。
「よし、風呂から出て座れ」
「はーい」
「まずは水掛けるからなー」
 「ざばー」と言いながら頭からぶっかけるときゃーきゃー言いながら笑う。何が楽しいんだか。
「頭洗うから目を閉じてろ」
 手に取ったシャンプーを広げてなのはの髪に触れる。手触りなめらかだった。わしゃわしゃと手を動かすにつれて増えていく泡がちょっと面白い。
「ケンジくん!おでこまできてる!」
「あー、はいはい」
 切羽詰った声でなのはが告げる。ぱぱっとおでこまで流れていた泡を飛ばし、泡立てる作業に戻る。立てれば立てるほどなのはの目にいく可能性も高くなるが楽しいんだからしょうがない。
「ケンジくんー、もういいよー」
「いや待て。もうちょっと。せめてアフロくらいまで」
「止めてよ!もうっ」
 ああ!なのはの野郎、シャワーのコックを捻りやがった。くそぅ、俺の努力が水の泡に…。
「はぁ、もう一人で洗えるな?」
「うん、だいじょぶ。ありがと」
 シュコシュコとボディソープを出すなのはを確認して、湯船に片足を突っ込む。
「あ……」
「どうした?」
「ケンジくん、せなかもお願いしちゃダメかな」
「……いいけど」
 名残惜しみながらも足を引き抜く。スポンジを受け取り、髪に泡がつかないよう気をつけながら小さい背中を洗ってやる。
「なんかもう、ここまできたら全部洗いたくなってきたな。いいか?」
「え、うん。いいよ」
 了承を頂けたのでがんばってみることにする。うなじから足のつめの先まで泡まみれにしていく。
「あわあわー」
「あわあわー」
 なのはは楽しそう。俺は真剣。一部の隙間もなくすほど泡立てるのに夢中になっていた。
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