暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第八十一話 六芒郭顛末(下)
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
助手の上野正豊が副官の米山大尉と応答する、
「まぁ御父上のような苦労をしないで済む分運がよかったのですな。しばらくはおとなしく安静にしなさい」
 輜重将校であった豊守は東州乱で段列を襲撃した敗残兵との戦闘に巻き込まれ膝を負傷した。
いまでは杖に頼らねば歩けない。。
「いや先生、俺がいないと聯隊イタタタタタタ」
「副官、来客だ」
 大辺がそういい扉を示す。そこに居たのは重臣団筆頭にして駒州軍参謀長益満敦紀少将だ。

「参謀長閣下」
 療医二人以外が敬礼を捧げる。作業を止めてまで敬礼をさせないのは駒州将家の”身内”間での風習であった。
「かしこまらんでよい。あくまで非公式の見舞いだ――すまないが将校だけで話したい」
 処置を済ませてから療医達は目礼をし、退出した。

「まぁなんだ、聞きたいことはたくさんあるが――とにかくよくやってくれた」

「はい、私も正直良く分かってないのですが」

「あぁまったくだ。何が起きたのか、確証を持って言えるのは結果だけ――面倒なことをしてくれたな」

「いやぁあはははははは、何が何だかわからないならあぁするしかないじゃないですか」
「莫迦か貴様は」
 益満はジロリ、と若い大佐を睨みつける。
「莫迦ですよ、あそこで討ち取った方がよかったかもしれない」
 豊久は力なく笑みを浮かべる、だが益満は重臣筆頭に相応しい威を持った視線を向ける。
「それでも貴様は殺さなかった」「‥‥‥怖かったんですよ、副帝をあそこで殺めたら後戻りができない」
「ほう」「生かしておけば選択肢は残り続ける。殺せば後戻りができない。私は生かす方を取った、それだけです」

「それだけか?ここにきてあの姫様に入れ込んでたとも聞いているぞ?
いまは人払いをしてある、それならそうと言え」

「なんですか!なんなんですか!惚れた腫れたで揶揄するのは会話の内容でなく共通の話題を保有するという事実を確認するためだけの行為であり会話という行為への共感に意味を見出し、会話の内容に意味を見出さないもの!
それは形式主義の空虚さへの堕落であり、軍人の奉ずるべき実用主義への概念的な殺人に他なりません!!」
 そこまでまくし立てると脇腹を抑え、駒州公が重臣団が俊英の攻勢は沈黙した。
「元気がいいな」「‥‥‥」

「まぁよかろう、貴様の内心全てを説明する義務もあるまいよ。
だが、貴様は合理を信望しすぎだ。あぁ違うな、人前で合理を信望する振りをしすぎている。
子供の時分から何も変わっとらん」
 豊久は黙って眼を閉じる。
「それで、本命は何ですか、益満の殿様」
「‥‥‥面倒ごとが起きている」

「またですか、護州、西州、駒州、龍州、そして近衛が手柄を挙げた。
均衡としては最上の結果ではありませんか。これ以上に何を求
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ