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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
夜の静寂に
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、両手で持って食べると身がぽろぽろと零れてしまうのである。
オマケにいつも食べている魚は切り身が多く、骨はあらかじめ取られているものが多い。
食べる度に細かい骨が口の中をちくちくと刺激して、もごもごさせながら骨を出しているために食べるのが遅い。
ごめんなさい、ってヒカリは申し訳なさそうに頭を下げるが、他の子ども達は気にしなくていいよって言ってくれた。

「骨取ってやろうか?」
「へ、平気だもん!」

太一が揶揄えば、ヒカリは躍起になって魚にむしゃぶりついた。
よしよし、と頷く太一に、空は呆れるやら感心するやらで苦笑するしかなかった。
太一が先程のようなことを言ったのは、恐らくヒカリが周りを気にしているのを払拭させるためなのだろう。
太一の妹とは思えないほど、ヒカリは他人を優先するきらいがある。
周りに気を使い過ぎて、自分のやりたいことや言いたいことをため込みがちなのだが、太一はヒカリの膨らみ過ぎた心の風船を上手くガス抜きしているのだ。
自然と兄をやってのける太一を、空は凄いなぁと思わざるを得なかった。

「………………」
「……大輔?どうしたの?」
「……何でもないっす」

そんな太一とヒカリに視線を向ける大輔に気づいたのは、空だった。
眉を顰めて、じーっと食い入るように見つめているから、一体どうしたのかと思って尋ねるのだが、大輔は首を横に振るだけだった。
こういう時の大輔は意外と頑固なので、きっと答えてくれないだろう、というのは経験上よく分かっていた空は、それ以上何も言わなかった。
そう言えば海に行った時も、太一とヒカリをじっと見つめていたなぁって思い出す。
何か言いたいことでもあったのだろうか、言いたいことははっきりという性格の大輔にしては珍しい。
一人っ子が故に、大輔の心情が思い当たらない空が大輔の本心を知るのはもう少し後のこと。










パチパチという薪がはじける音がした。

「おい、ガブモン。毛布代わりにその毛皮貸してくれよ。俺すっごく気になってたんだよなぁ、ガブモンのさ、毛皮の下ってどうなってんの?」
『へっ!?いやっ、ちょっ、待って待ってそれだけはっ!!』

そろそろ寝よう、と言い出した太一が、悪戯っ子の笑みを浮かべながらガブモンにちょっかいをかけている。
そのガブモンはと言うと、顔を真っ赤にして慌てて逃げ、治の後ろに隠れた。

「おい、よせよ。嫌がってるだろ?」
「なはは、悪い悪い」

眉を顰めて太一の悪戯を咎める治。
うう、って若干涙目になっているガブモンを、よしよしって撫でてあげれば、ちょっと照れくさそうに笑った。

「全く太一は……」
「だーから悪かったって!」
「僕じゃなくてガブモンに謝ってくれよ」
「おう、悪いな、ガブ
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