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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
夜の静寂に
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、大輔はじろって原因を睨み付けた。

「ブイモン、何だよいきなり!」

そう、原因はブイモンだった。
賢が手伝おうとした瞬間、ブイモンは何故だか知らないが持っていた葉っぱを放り投げるように手を離してしまったのである。
その衝撃で大輔と賢はひっくり返り、葉っぱに乗せていた果物がコロコロと転がって行ってしまったのだ。
が、ブイモンの顔を見た大輔の口から、更なる抗議の言葉が出ることはなかった。
そこには、蒼い顔を更に真っ青にさせて、赤い目をこれでもかと見開かせて、硬直していたブイモンがいたからだ。
へにょりとした2本の角としっぽがピーンと尖って、胸の位置で左手で右手をぎゅうっと掴んでいる。
腕に変な力がかかっているのか、小刻みに震えていた。

「……ブイモン?」
「ど、どうしたの……?」
『…………ご、めん。ちょっと、びっくり、した、だけ……』

あまりにも様子がおかしいブイモンに、大輔と賢は顔を見合わせた後、恐る恐ると言った様子でブイモンに話しかける。
は、と我に返ったブイモンは、気まずそうに視線を逸らし、落ち着きなさげに右手を擦りながらも小さく謝罪した。

「………………」
「………………」
『………………』
『……あ、え、えっと、早く行こうよ?きっとタイチ達も待ってるよ?』
「あ、そ、そうだね!えっと、じゃあ、大輔くん。そっち持って!」
「お、おう!ほら、ブイモンもそっち!」
『……う、ん』





総ての支度が終えた頃には、青白く光る月が森の向こうから顔を覗かせていた。
今が何時なのかすらも分からないが、お昼ご飯もまともに食べられなかったために子ども達のお墓は悲鳴を上げている。
焼き魚は1人1つずつ、大輔とヒカリと、途中合流した賢とデジモン達で手分けして持ってきた果物を2つずつ。
到底足りるとは思えないけれど、ないよりはマシである。

「よーし、とりあえずご飯にしようか」

丈に促されて子供達はご飯にありつく。
魚を焼いただけなのと、果物丸かじりという質素なものだが、空腹は最高のスパイスだ。
まともな食事にありつけた子ども達は、夢中になってかじりついた。

「Delicious!」
「でり……?」

口元に食べかすをくっつけながら魚お頬張る大輔は、またも英語を使う。
隣にいた賢がきょとんと大輔を見つめていると、治が美味しいって意味だよ、って教えてくれた。
そっかーって納得した賢は、魚を一口食べて、

「でりしゃす!」

って大輔の真似をした。
Good!と大輔もサムズアップする。

「ヒカリ、大丈夫か?」
「う、うん……」

初めての食べ方に悪戦苦闘しているヒカリに、太一が目敏く気づく。
普段はお皿に乗っているお魚をお箸でつついて食べるから
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