ちいさなしまのおはなし
夜の静寂に
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向かいの席には空とミミ、光子郎と丈はそれぞれ別の座席で寝ていた。
治とガブモンは出入り口付近で座りながら目を閉じている。
そして南国風の葉っぱで誂えた寝床に、デジモン達。
ちょっとずつ引き上げられていく意識で、先程の夢のことを思い出した大輔は何となく気分が悪くなる。
よく覚えてはいないのだけれど、何故かは分からないが不快な気分になったことだけは覚えていた。
窓の外を見ればまだだた夜が明ける気配はない。
もう1度寝ようと座席に横になってみるものの、不快感がどうしても拭えない。
「………………」
起き上がる。そろそろと座席から降りて、そっとそっと足音を立てないように静かに歩いた。
『……ダイスケ?』
「っ、ブイモン、起きちゃったのか?」
起こさないように細心の注意を払っていたつもりだったが、僅かな振動を感知したらしく、パートナーであるブイモンは、寝ぼけ眼の赤い目をとろとろさせながら、大輔を見つめていた。
眠い目を擦りながらブイモンもそっと身体を起こして、そろそろと座席を降りて大輔の下へと向かう。
『どうしたの……?』
「あー……ちょっと夢見悪くて。顔洗いに行こうと思ってたんだ」
だからついてこなくていい、と言おうとしたら、ブイモンも行くと言った。
『オレもちょっと……顔洗いたい』
「ん?お前も何か変な夢でも見たのか?」
『……そんなとこ』
曖昧に微笑むブイモンに、そっかぁって大輔はそれ以上深く聞くことはしなかった。
ただもう早く顔を洗いたくて、顔を洗って寝たくてしょうがないのである。
2人でそっとそっと、抜き足差し足をして眠っている先輩達を起こさないように電車を降りた。
「ふぁ〜あ……」
『んーっ……』
2人して伸びをする。
ばきばき、って背骨が鳴ったような気がして、いててって呻く。
伸びをした時に見上げた夜空には、白い絵の具がついた筆を振って散らばしたような星が広がっていた。
人工的な光に包まれた都会で育った大輔は、遮るものが何もない夜空を初めて見た感動で、目を輝かせていた。
はしゃぐ大輔を、顔を洗うんじゃなかったの?って苦笑したブイモンによって我に返った大輔は、慌てて島の縁へと移動した。
斜面になっている縁を慎重に降りて、膝をつく。
緩やかなさざ波が島の縁に当たってちゃぷちゃぷという水音が響いた。
水の向こうに映る大輔を掻き消すように、両手を水につける。
掬い上げた水を叩きつけるように、ばしゃっと顔にかけた。
大きく息を吐くと、心地いい風が、水がかかった大輔の顔に吹きつけた。
やっとすっきりした気がする、と大輔は顔を軽く叩いた。
先程見た夢の内容は覚えていないけれど、どうもむかむかとした、もやもやとしたものが心の奥から湧き上がってきてしょうがない。
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