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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
夜の静寂に
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ているけれど、それでも、いつもと違った。
いつもなら、こんなんではないのだ、いつもなら、もっと──。

「どうしたの?」

は、と3匹は一斉に顔を上げた。
見れば、寝たと思ったはずの空がブイモン達の方を見ていたのである。
慌てて何でもないと返して、おやすみなさいって言って横になった。
不思議に思った空だったが、眠気に勝つことは出来なかった。
















ぽつん、と。

大輔は“そこ”に立っていた。
上も下も前も後ろも右も左も何処を見渡しても真っ黒に染まっており、何も見えない。
しばらくぼんやりと前方を眺めていた大輔だったが、だんだん頭が覚醒してきて、はた、と気づいた。

“ここ”は、“何処”だ。

何処を見渡しても暗闇の空間に佇んでいた大輔は、“そこ”にいるのが自分1人だと気づいて硬直する。
太一は?治は?空は?光子郎やミミ、丈、賢は?ヒカリは?
ブイモンは?
誰もいないのである。尊敬する先輩達も、友達も、パートナーも、誰もいないのである。
光さえ飲み込むほどの深い闇の中に、大輔は1人ぼっちで佇んでいるのである。
そのことに気づいた時、急に怖くなった大輔は、先輩達の名を呼ぼうと口を開いた。


「───────────────────────────────────────────────────────────────────────────っ!!」


だが腹の底から喉を通して吐き出されたはずの声は、まるで暗闇に食べられてしまったかのように、その空間に響くことはなかった。
あれ?あれ?って大輔は自分の喉を抑えて、もう一度声を出してみるが、やはり結果は同じだった。
誰もいない、何処にいるのか分からない、声も出せない。
大輔の中に燻っていた不安の火種は、徐々に大きくなっていく。



ぽわ……



暗闇に閉ざされた空間で、恐怖に支配され始めた大輔の小さな身体は全身が震え始め、お気に入りの青い服をぎゅっと握りしめる。
初めて感じる孤独に大輔の心が押し潰され始めた時だった。
視界の端に、白い何かが黒を掻き分けるようにして浮かび上がったのである。
誰か、いるのだろうか。藁をも縋る思いで振り返った大輔の視線の先にいたのは──。







気が付いたら薄暗い、鉄の板が目の前に浮かんでいた。
路面電車の天井だと気づくのに数分かかったのは、脳みそがまだ覚醒しきっていなかったからである。
むくり、と両脚と腹筋を使って上半身を起こした。
周りを見ると、隣に身体を丸くして眠っているブイモン、反対側には両手を頭の下に置いて枕代わりにしているヒカリ、ブイモンの隣には、パタモンを抱えて幸せそうに笑いながら寝ている賢の姿。

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