第14話 破滅への序曲
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戦は同盟軍の補給に過大な負担を掛けることにある。
であれば、輸送船団を攻撃して補給線を断とうと試みるだろうことは一目瞭然であった。
だが、フォークはそれを理解していながらも最前線までの空域は同盟軍の占領下にあるからと一笑し、ロボスもこの事態を深刻に受け止めていなかった。
この態度にキャゼルヌは絶句し、苛立ちを抑えながらも司令長官室を出る。
「(ヤン、生きて帰れよ。死ぬにはバカバカし過ぎる戦いだ)」
彼は、切実にそう思った。
* * *
自由惑星同盟最高評議会の会議では、当初の予想と違う経過に議員たちが頭を悩ませていた。
「これでは際限が無いではないか! 帝国は我が同盟の財政を破壊するつもりなのだ。民衆を道具にするとは憎むべき方法だが……我が軍が解放と救済を大義名分としている以上有効な方法であると認めざるを得ない。もはや撤兵すべきだ」
とのジョアン・レベロの言葉に、
「賛成」
と、ホアン・ルイが賛成票を投じる。
周りの議員たちも困惑を隠せないでいた。
そんな中、某国家で『ルーピー』呼ばれた元首相と同じぐらい頭のイカれた女性議員――名をコーネリア・ウィンザーという――が碌でもないことを発言する。
「反対です。我が軍が飢餓から彼らを救えば、帝政への反発と相まって民衆の心が同盟へ傾くのは必然なのです」
この発言に、周りからも『そうだ、そうだ』『和平の必要はない』と賛成の声が上がる。
「この上は、議長のご意見を」
「前線で何らかの結果が出るまでは軍の行動に枠を嵌めるようなことはすべきではなかろう。もしもここで撤兵すれば、遠征は愚行と浪費の象徴として市民の笑い物になるだろう。つまり、我が評議会は市民の支持を失い次の選挙で敗北するということだ」
こうして、自由惑星同盟最高評議会の議員たちは同盟軍の将兵に対する死刑宣告を自ら宣言してしまった。
それがどんな結果をもたらすかも知らずに……。
* * *
――ヤヴァンハール星域――
「中尉、第十艦隊のウランフ中将と連絡をとってくれ」
「はい」
画面にウランフが現れる。
「ウランフ中将、お元気そうでなによりです」
「おお、ヤン・ウェンリーか。珍しいな、何事だ?」
「占領地を放棄して撤退しようかと思うのですが」
「一度も砲火を交えないうちにか?」
猛将であるウランフにとって、一度も戦わずに引く――というのはあまり好きではないらしい。
「敵は、焦土作戦に出て我々が餓えるのを待っています。このままでは、我々はロシアに出兵して敗北したナポレオンの二の舞になるのは明白です」
「ふむ……だが、だとすれば敵は機を見て攻勢に出てくるつもりだろう。下手に後退すれ
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