第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
004 生き残るために
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視して、そういったところにばかり気を取られるため、テストの点数は全く取ることが出来ない。
だがこの授業の受け方こそが、本来軍人にとって必要な思考回路なのだろう、とフロルは開き直っていた。
自分がその状況に陥った場合、いったいどういう作戦を立案できるか、そしてどれだけの艦隊を統一し有機的に指揮できるかが、このハイネセン同盟軍士官学校に在籍する士官候補生に求められる能力なのではないだろうか。
無論、これは前線に立つ作戦指揮官に必要な能力であって、これが後方の兵站であったり、敵軍の裏をかくような情報戦・諜報戦に至ってはまた違う能力が必要となるだろう。
その点、ヤンは作戦指揮を取る将としての能力が傑出している。これもまた、戦史という歴史を通じて戦争をフロルとよく似た視点からも、観ているということの顕れに他ならないだろう。もっとも、ヤンの場合は歴史を愛するだけあって、固有名詞もよく覚えているのだが。
「戦史の授業は面白くないからなぁ」
「そうですか?」
フロルの愚痴に素早く反応したのは、ヤンだった。ヤンとしては、戦史こそ面白い、と考えているのだろう。もっとも、ヤンやラップ以外にも戦史研究科の人間はいるはずだから、フロルのような戦略研究科の人間が発言を彼らが聞いていれば、憤慨したに違いない。フロルにとってはくだらないこと限りなかったが、戦略研究科の人間は自らを士官学校におけるエリートと自負して他の科の人間を馬鹿にする風潮があったのだ。
確かに、作戦指揮官としての能力を重点的に育成する戦略研究科は士官学校にある科の中でも花形にあたったが、それでもって人を馬鹿にすることこそ、頭が足りていないという話である。
「戦史概論を教えているブッシュ教官が悪い。あの爺さんは教科書を読み上げるだけじゃないか。あれなら自分で調べて勉強した方が面白い」
フロルは嘆息しながら愚痴った。教科書に書いてあることを口に出して読むだけで、なんの解説もない授業など、時間の無駄以外の何物でも無い。教科書を読んだ方が早いのだから。
「あれ、でもブッシュ教官はテストも緩くて評判がいいって聞きましたけど」
ラップもどうやら、あまり戦史の授業に熱心では無いらしい。声を上げたヤンも、フロルの言葉に納得したのか、苦い顔である。
「戦史はただ昔話を聞く時間じゃないぞ」
ラップにはそう言って留めるに止めた。きっと、ヤンがラップに戦史の面白さを語るだろうから。実を言うと、フロルはヤンと歴史の話をするのが面白かった。ヤンの歴史観は常に第三者的な視点、つまり神の視点からの歴史観であって、そこに自己の介入を認めようとはしない。だが一方、フロルは歴史のIFを考えるのが好きで、だからこそ話が盛り上がるのである。
「そういや二年生は来月、戦術シミュレーションの教練があったな。対戦
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