第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
004 生き残るために
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えられるだろう。もちろん、変えられるということは一概に良いこととも言えない。
ならば、できるだけ原作に介入せず、ここぞという時のために知識というアドバンテージを残しておく、という手段もある。
しかし、それもまた出来ない。
理由は簡単。
フロル・リシャールという人間もまた、1人の人間に過ぎないからだ。
彼は決して超人ではない。
誰よりも強く、誰よりも賢く、誰よりもハンサムな、そんな万能人間では無い。
フロルは確かに、強い。彼の学年における格闘訓練の成績は学年一である。だが、教官に薦められるがままに出場した同盟軍格闘競技大会は第4艦隊第25歩兵大隊所属の一兵曹に初戦敗退を喫した。
フロルは確かに、頭が良い。彼は期末考査で満点に近い点数を取る教科もある。だが総合的な成績だとむしろ中の上程度で、すべてのテストを95点取るような秀才ではない。一つ下の学年で10年に1度の秀才と呼ばれるマルコム・ワイドボーンと昨年のフロルの成績では、比べるべくもない。
フロルは確かに、ハンサムかも知れない。190近い身長、職業軍人らしいしっかりした体躯、整った目鼻立ちと、母親譲りの紺色の瞳、紅茶を濃く淹れすぎたような色の髪。だがそれも立体TVに出てくる俳優に比べれば洗練さに欠けていたし、探せば彼よりも格好いい人間など他にもたくさんいるだろう。
射撃にしてもそうである。彼は彼の学年で有数の射撃手となったが、本日の士官学校内選手権大会では所詮5位レベル。同盟軍全体でみれば、誇れるようなものではない。
つまり、彼は決してラインハルトやキルヒアイス、後年のユリアンなどと比べれば全然凄くないのである。
むしろ、フロルにとっては彼らのスペックが異常だと思えるほどなのだが。
無論、彼とてただ漫然と手を拱いるわけではない。彼はまだ小さい頃から良く体を動かし、勉強に励んだ。幼稚な遊びではなく、ランニングや筋力トレーニングに精を出し、ボクシングやフェンシングをハイスクールの部活動で学んだ。相沢優一における知識は21世紀のものであって、この時代ではことごとくが役に立たない。あらゆる学問が彼にとっては驚異的な進歩を遂げていたのだ。常識すら覆ったものも数えきれず、彼は一から勉強を始めたも同然であった。
そういった地道な努力をして、フロルは激動の時代に備えている。
そうでなければ、とてもじゃないがラインハルトたちが跋扈する戦場に立つことも、そして運命を変えることもできないから。そして原作を変えるにはどかんと一発介入するのではなく、地道に状況を変えていくしかない。雌伏をしていて、気付けば戦死、など冗談では無い。彼は彼でラインハルトに、帝国に殺されない努力をせねばなるまい。
彼は20年弱の
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