第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
004 生き残るために
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んて、凄いと思います。だけど、私はあまり銃が好きじゃないだけです」
「じゃあなんで今日は見に来てくれたの?」
フロルの問い掛けに、ジェシカは微かに怯んだようだった。
「……ラップとヤンに誘われたからです」
フロルがちらりと目をやると、ラップは小さく肩を竦めるジェスチャー。つまり、違うということなのだろう。どうやら、このお嬢様はフロルが気になるらしい。
フロルは天を仰ぎたくなった。
ジェシカとフロルが出会ったのは、ジェシカの通う音楽学校で開催された、学校祭の時である。フロルはかねてから士官学校の近くに存在する音楽学校にジェシカ・エドワーズがいるであろうことを予想していたため、それを確認するために行ったのだ。実を言うと、フロルは士官学校に入ってから、毎年この音楽学校祭には参加していた。ジェシカがいったいいつ入学しているか、把握できていなかったためである。だが結果的には、フロルが3年になった時、彼女は一年生として音楽学校のピアノ科に在籍しているのを見つけた。
彼女を見つけたフロルは、とりあえずそれで満足して話しかけることもなく撤退したのだが、後日ラップとヤンからのつながりで、ジェシカと知己を得ることになった。その段階で驚いたことに、ジェシカは学校祭で見かけたフロルの顔を覚えていたらしい。
もっとも、士官学校の制服で来ていたかららしいが。
ジェシカ嬢の父はハイネセン同盟軍士官学校の事務局長である。
それからのこと、フロルは持ち前の菓子でもって仲良く友人関係をしていたつもりであったが、どうやら思春期のジェシカ嬢の琴線に触れるものがあったのだろう。なんとなくではあるが、フロルが気になるらしい、とフロルは見ていた。
本来であれば、ジェシカは親友と呼べるほどまで仲を深めたヤンやラップの間で、その心を揺らせるはずなのだが、何かと目立つフロルがそれを妨げているらしい。
フロルにとって、原作崩壊の危機である。
フロルにとって、この第二の人生におけるもっとも恐ろしい事態とは何か。
それは相沢優一の記憶が、この世界で通用しなくなることである。
彼が有している記憶は、あくまでフロル・リシャールという異分子が存在しない銀河英雄伝説の世界の出来事である。
彼ほどのファンになると、ある程度の事件や戦争の年代、名前までは網羅せずともある程度の登場人物たちの名前をしっかりと覚えている。
だが、フロルが活発に介入することによって、原作が解離してしまえば、その知識が役に立たないという可能性も出てくるのだ。それは困る。彼の持っている最大のアドバンテージがなくなるということを、意味するからだ。
どうやらこの世界はSFでありがちな<抑止力>やら<修正力>がないらしく、フロルが介入すれば未来は変
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