四十 柔拳VS蛙組み手
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双方の間で確執を生む。分家はこのどうしようもない隔たりを運命だと諦め、現実は無情だと嘆く。それはネジとて例外ではなかった。
そしてネジがヒナタを憎む原因たる、あの日。
宗家の跡継ぎであるヒナタが攫われたあの夜。
外の異変に逸早く気づいたのはヒナタの父・ヒアシではなく宗家でもなく、ネジの父――日向ヒザシであった。
単独誘拐犯を追い、ヒナタを奪取するヒザシ。されど、隙を突かれた彼は逆に自身が連れ攫われる羽目に陥る。帰還した娘の無事な姿に安堵したヒアシは、直後里から非情な命令を受けた。
即ち白眼の秘密を探られるより前に、己の弟――ヒザシを呪印にて殺せと。
分家であるヒザシが死ねば、呪印は己が役目を果たす。白眼の能力を封印し、決して外部に秘密を漏らさない。けれど生きている彼の眼は依然能力を宿したままである。
ヒザシとて一族の為自決する覚悟を持ち合わせているだろう。だが万が一の事を考え、脳神経を破壊する秘印を結べとヒアシは強要された。
自らが背負う宗家の長としての役割と血の繋がった兄弟。双方のせめぎ合いはヒアシを追い詰め、葛藤させた。
そして彼は決断を下す。
誰が責められようか。
一族か。両家か。忌まわしき印か。誘拐を許した幼子か。単独で追った父か。決断を迫られた父の兄か。それとも木ノ葉の里そのものか。
きっとこれは誰の罪でもない。
それでもネジは恨まざるを得なかった。憎まざるを得なかった。
父が死ぬ原因となった宗家が。理不尽極まりない一族の有様が。
そしてなにより実の息子より宗家の娘の許へ向かった父が、悔しくて仕方がなかった。
「俺の父…――日向ヒザシは実の兄である日向ヒアシに…。宗家に殺されたんだ」
真っ青な空の下、苦渋に満ちた顔でネジは告げた。握り締めていた拳が震える。
会場内で疎らに立つ木々。その一本の枝に止まった鳥の瞳に、自らを籠の中の鳥と称したネジの姿が映り込む。
やがて彼は、愕然と話に耳を傾けていたナルを真っ直ぐに見据えた。
「だから言っただろう? 人は生まれながらに全てが決まっているんだ」
鳥はまだ、羽ばたかない。
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