ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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うと、先に行っていてという言葉だけ残して、何処かへ行ってしまったのだ。
反射的に大輔が後を追おうとしたけれど、空に首根っこを引っ掴まれてしまい、ぐえっとなってずるずると引き摺られた。
階段を駆け上った先にあった古いお堂に、空は大輔とヒカリの手を引いて中に入る。
そこには、先客がいた。
「あれ、光子郎?」
「空さん、大輔くんにヒカリさんも……」
4年生の、泉光子郎であった。彼もまた大輔や治、空と同じくサッカークラブに所属しているが、根っからのインドア派で、暇さえあればパソコンを弄っている子である、という印象しかない。
そう言えば光子郎さんもキャンプ場で見かけなかったなぁ、と言うことを思い出した大輔は、遠慮なく聞いた。
「光子郎さんも、サボり?」
「え?」
「こら、大輔!えっとね、太一の奴、当番サボってどっか行っちゃったのよ。大輔とヒカリちゃんで探しに来たらしいんだけど……」
「光子郎さん、お兄ちゃん何処かで見かけなかった?」
「そうだったんですか。すみません、僕は見かけてないですね」
そう、と空は困ったような表情を浮かべる。本当に、あの莫迦は何処に行ったのだろうか。
寒いねーという会話をしている大輔とヒカリを尻目に、光子郎は冷や汗流しまくりであった。
サボりか、と大輔に指摘されたが、その通りだったからだ。
空が話を逸らしてくれた結果、誤魔化すことができたとは言え、その空に突っ込まれてしまったら誤魔化し切る自信がない。
さてどうしようか、と内心1人で焦っていると、救世主が現れた。
「やーんもう!さいっあく!何だって吹雪なんか……!」
「あれ、ミミさん?」
「え?あれ?光子郎くん?」
ガラリ、とお堂の障子が再び開かれて、中に飛び込んできたのは全身赤系の色でコーデされた、ウエスタンスタイルの女の子。
大輔とヒカリと空は知らなかったが、光子郎とその子は互いに面識があるらしい。
誰、って聞いたら、同じクラスの子ですと光子郎は答えた。
ミミでーす、って女の子は明るく答えた。
「賢、ほら、急いで」
「寒いよー、お兄ちゃん!」
開いているお堂の入り口から、続いて2人入ってくる。
先程別れた治だった。その傍らには、治によく似た大輔とヒカリと同じぐらいの小さな男の子。
きらり、と胸に不釣り合いなほどの大きなペンダントをしていた。
「治さん」
「あれ、光子郎もいたんだ」
「治くん、太一は?」
「ごめん、見なかったよ……」
「ぎゃー!退いてくれ、退いてくれ!」
「……訂正、今見つかった」
「あの莫迦……」
入り口のところで立ち止まっていたら、治の背後から喧しい声。先程から探していた問題児である。
ひょいと避ければ、なだれ込むようにお堂に飛び込んできた。
「うひー!
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